やっぱり凄い!体育会運動部員の"就職力" 「負けの経験」で時短就活に勝つ
「おまえたちは、人がやりたがらないことを進んでできる。それを強みだと思いなさい」
当時コーチだった小松監督の紹介で、凸版に勤めるOBを訪ね、追加募集の試験を突破した。OBたちの仕事が社内で高く評価されていると知ったのは、しばらくしてからだ。
「先輩たちの積み上げてきた信頼が大きいと感じました。確かに、自分も『できません』とは言わず、できることはすべてやる。相撲部で学んだことです」
青山学院大学陸上競技部・長距離ブロック出身の三野貴史さん(23)は、大手食品メーカー勤務。仕事は忙しいが、「あの朝練に耐えたから、何でもできる」と振り返る。学生時代、毎朝5時前に起床してグラウンドに集合し、朝食前に13キロを走った。部員全員が、門限22時厳守の寮生活。4年時は寮長を務めた。
「門限を破ろうという人はいませんでした。全員が同じ方向を向いていたから、チームとして強くなれたと思う」
毎朝、部員が交代でスピーチする「今日の一言」の時間に、「ありがとう ごめんなさい」とボードに書いて話したこともある。
「人としての基本が、社会に出ても大切だと感じたから」。思いは今も変わらない。
勝利を導いた分析力
三菱商事に勤務する佐藤正隆さん(24)は、東京大学アメリカンフットボール部の主将を務めた。アメフトの醍醐味は、頭脳戦にあると言う。
「スポーツ未経験者もいる東大アメフト部が勝てるのは、徹底して分析するから」
毎日トレーニング後2時間、試合の録画を見て戦略を練った。選手、マネジャー、トレーナー、アナライジングスタッフ、それぞれが役割に誇りを持っていた。佐藤さんはオフェンスライン。入学時75キロだった体重を115キロまで増やした。「筋肉に悪い」と酒は断ち、ミーティング中も鶏肉やパンを口に運んだ。
「仲間と本音でぶつかると、得手不得手や自分の本質が見えてくる。ぼくは『素直』。嘘をつくのも取り繕うのも苦手だし、考えはまっすぐ話す」
在学5年目に迎えた就活では、そんな自己分析も役立った。内定獲得後はコーチとして後輩を指導した。部活も就活もやりきったと思う。
運動部での経験が仕事に直接生きたのは、スポーツ関連会社ドームで広告・PRを担当する別井瑛奈さん(29)。立教大学野球部のマネジャーだった。
「選手たちの食事管理や食材の発注、調理担当のパートさんのシフト管理、リーグ戦でのウグイス嬢など、マネジャーの仕事は多岐にわたりました」
野球部の広報誌をつくる際は、企業を回りスポンサーを募った。社会人としての仕事のイロハを部活で学んだ。現在の仕事も、その延長線上にある。