安倍総裁、300議席取る方法教えます

兵法三十六計で占う衆院選(上)

民主党が「敵戦計」をつかえば意外な善戦も?

一方、6段階の2番目の「敵戦計」は圧倒的な優勢ではないが、不要な部分を切り落とせば、まだまだチャンスがあるという戦術である。

民主党に今こそ必要な、この「敵戦計」について研究してみたい。
民主党は「動かすのは決断」とマニュフェストを掲げたが、今こそ決断すべきは割り切って「敵戦計」を実行することだ。

この戦術は今や第二勢力に落ちてしまった民主党が行わなければならない定石である。だが、これは、民主党の幹部にとっては不得意な分野である。

野田佳彦首相はじめ、岡田克也氏も前原誠司氏も真面目ではあるが、経験が少ない。その分、今回の混乱の政局を差配することは出来なかった。しかし、考え方によっては古い勢力の小沢一郎、鳩山由紀夫、菅直人という三人の党首経験者の不協和音がなくなって、その取り巻きも消えてしまえば、新しい民主党のベクトルが決まるのでこれからの民主党が本番なのかも知れない。

やはり「敵戦計」にも6種類の定石がある。まずその初めが次なる戦術である。

1)無中生有(むちゅうしょうゆう)

これは本当は何もないのに、いかにもあるように見せる詭計である。

「老子」の「万物は有より生ず、有は無より生ずる」から来た言葉である。偽装工作をわざと露見させ、相手が油断した所を攻撃するという作戦であるが、民主党の懐が深いという印象は薄いので、完全な作戦を今の民主党に求めることは困難である。

だから逆にその偽装工作を表に出し、自民党や維新の会の油断を誘うべきだ。いつまでも与党であった事に拘泥せず楽しく「負け戦」してみてはどうだろうか?

これまではあまりにも意見が違うのに一度政権を取るためにという理由で無理に無理を重ねてきたが、今回で原点に戻ったという見方もできる。

ここに来て意外に若い人の間にも、野田人気が出て来ている。脱原発も反消費税もTPPも、単なる政策論はなく都市部の浮動票を取り込む戦術を志向するには「無中生有」も良いのではないか。もっとユーモアを混ぜてこれまでの失敗を吹っ切る覚悟で選挙戦の最後の粘りに期待したいところだ。

2)暗渡陳倉(あんとちんそう)

「史記」に出てくる韓信が桟道が直らないうちに、暗いうちに旧道から廻り敵を攻めるという故事が出典だ。いまの民主党にとっては、偽装工作によって攻撃を隠蔽し、敵を奇襲するという高等戦術が必要だ。偽装工作といえば、民主党は農村部の街頭演説では「TPP」について触れないようにしている。選挙戦に入ると熱に浮かれ出すから、都合の悪いことは隠蔽する結果になる。

それにつられたのか、維新の会も石原慎太郎と元「立ち上がれ日本」のメンバーが入って来てから、華ばなしく打ち上げていた維新の政策がうやむやになっている。今後は橋下徹氏の言い訳が増えるほど、民主党のマニュフェストの公約違反も鳩山由起夫、小沢一郎、菅直人の時代の話に思えて来るから、不思議である。ただし、その結果、今回の選挙戦の争点化が色あせて来るのが心配である。

3)隔岸観火(かくがんかんか)

敵が混乱して、敵同士が離反してしまうと必ず自滅の道を辿る。本来なら自民党に「隔岸観火」の状況になって貰いたかったのだが、気がついたら民主党の中が自滅の道になってしまった。

本来は党内の秩序に乱れが生じているので、党内綱紀を引き締める必要があるが、選挙戦に突入してしまえば、戦時下となるのでそれどころではなくなる。自民党以外の第3極も一枚岩になっているところは少ない。だから、民主党としては比較優位の戦術を取るしかない。

今は自民党が意気軒高だが何れはまた来た道を辿るような気がする。そもそも、今の日本のていたらくを作ったのはかつての自民党である。体質がすぐに変わるとも思えないから、次は意外と早い時期に自民党が自滅しないとは誰も否定は出来ない。歴史は繰り返すものである。

民主党よ、敵の油断を誘え!格好をつけるな!

4)笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)

敵を攻撃する前に友好的に接しておき、油断を誘う。 つまり、面従腹背を演出する話である。民主党は、本来なら主義主張の違い過ぎる党員が自民党をアンチテーゼとしたために、右から左まで幅広いグループを構築したわけだ。日教組の古株から、労働組合のうるさ型まで無理にお付き合いをして来たわけである。

話が合うわけはないのが分かっていても、政権与党は蜜の味だったのだろうか?多くの権力の亡者が一過性の人気を求めて民主党を離散したが、その理由が互いの好き嫌いだったり、些細な政策の違いで自分の権益を守りたいので民主党を離れて行った議員さんが多いようだ。国民の目線に立って今回の選挙では真剣に政治を目指して貰いたいものだ。

5)李代桃僵(りだいとうきょう)

「スモモに代わって桃が倒れる」という意味で不要な部分を切り捨て、全体の被害を最小限に抑えて最後は勝利する。と言った戦略である。

まさに民主党の今回のケースは小沢一郎を切り、鳩山由紀夫を追い落とし、菅直人を孤立化させ、民主党全体は意外に明るい雰囲気になってきた。確かに脱走兵が多くて現有の全議席は減少するが、脱走兵が残留したとしても当選出来ない候補者ばかりだから政党助成金も有効につかえる。だから、最後の数日で雰囲気が変化する事を期待しても良いのではないのか!?

6)順手牽羊(じゅんしゅけんよう)

羊の大群から、一匹ぐらい羊を盗んでも目立たないことから転じて、敵の隙をついて悟られない様に細かな損害を敵に与える事を意味する。

せこい作戦ではあるが、今の民主党は格好をつける余裕はないはずである。真っ正直な事は時として周りの人を不幸にするケースもある。野田佳彦は子供の時に先生から「正直の上にバカが付く」と言われたらしい。

真っ当な政治を目指す志を通すことは立派であるが「水清ければ、魚住まず」という諺もある。大きな政党をリードして行くには、正論ばかり言っていても末端の党員は食っていけない場合もある。

悪事を働いてはいけないが、党勢が下降している時にこそ、「呑舟」つまり舟を飲んでしまう位の気持ちとセコくても強かな実利主義の両面が必要である。

以上の6種類の戦術が、民主党の今後の指針だ。これを愚直に進めていけば選挙は水ものだから、意外に現在の議席数(233議席)の半分の歩留まり120議席以上でとどまるのではないかと予想する。

次回は、維新の会とみんなの党と未来の党が、今からの戦術はどうするべきかを考えながら兵法三十六計を指南書として、分析していく。

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