そこで、まず自民党が主導権を握っている「勝戦計」の六種類の計略について書いてみたい。なんといっても「中国4000年の歴史」に学ぶ勝つための定石なのである。まずは「勝戦計」の六種類の、1番目から始めよう。
第三極がまとまらない限り、自民党だけが得をする
1)瞞天過海 (まんてんかかい)
まず一つ目は、敵に繰り返し同じ行動を見せつけて見慣れさせておき、油断を誘って攻撃するという、中国人の得意な策略である。姑息ではあるが効果の高い計略である。
例えば、尖閣諸島の話で考えてみよう。最近中国政府は毎日のように漁船を尖閣諸島周辺に送り込んでくる。2010年には海上保安庁が一隻の漁船を「拿捕」して大騒ぎになったが、レアアースの輸出禁止を行い、日本に「カウンターパンチ」を与えて困らせた後に、当たり前のように漁船がわんさかわんさかやってくる。
海上保安庁は、その頻度が増えるごとに追い払おうとするが、千隻もやってくるようになると、実効支配しているはずが、逆に中国の度重なる既成事実によって、「中国に支配されても仕方がない」というような気にさせられる懸念があるのだ。
これが瞞天過海 の計略である。
今回の衆院選は、与党の民主党が勝手に自滅してくれたので、自民党には楽な戦いだ。だが、さらに追い討ちをかけるために、どうすればいいだろうか。
具体的にはこうだろう。「TPP 反対」は控え目にアピールする。また「消費税問題」では民主党と公明党との合意を強くアピールする。一方、「防衛問題」ではあまりムキにならず、論点を外したアピールをくりかえすのである。「脱原発」も同様の手法で誤魔化せば良い。
つまり、その内容よりも、「同じ公約をひとことで繰り返し主張する」ところに、他政党の油断を誘う効果がある。しかも、女性票を逃がさない効果も期待できる。勝ち戦なのだから、余計なことはいう必要がないのだ。
当面の敵は弱い民主党ではない。勢いのある第三極の「日本維新の会」や「みんなの党」である。このような乱戦になると、第三極どうしの相打ちを狙うのが得策だから、維新の会とみんなの党の選挙協力を、絶対にさせないようにすべきだ。
なぜなら、維新の会は、選挙の後には必ず自民党とのゆるい連携関係に入ってくると思われるからだ。さて、そこで勝戦計の二つ目を紹介する。
2)囲魏救趙 (いぎきゅうちょう)
敵を1箇所に集中させず、奔走させて疲れさせてから撃破する作戦である。
自民党が何も手を下さないのに、民主党の内部分裂が自民党を楽に戦わせる結果になった。自民党にとってはまさに笑いが止まらない状況ではないか。
本来、第三極は、民主党に協力姿勢を見せながら自民党を攻めるのが正しい布石である。ところが、なぜか、第三極は政権与党である民主党に対してばかり、ネガティブキャンペーンを行っている。百戦錬磨の自民党は第三極を集中させないように多面的な裏工作を行いながら、逃げ切り体制に入りつつある。
この場合、初めは、ほとんど手を組もうとしていた橋下徹氏の「維新の会」と、渡辺喜美氏の「みんなの党」との関係を、自民党は何らかの裏工作で壊すことに成功したと見るのが自然である。
もしくは両者の相性の悪さに感謝すべきなのかも知れない。今回は選挙間際になって右往左往する第三極の失策が目立つ。「小異を捨てて大同につく」スケールの大きな流れが作れないところに第三極の限界を感じる。もしも、みんなの党の幹事長である江田憲司氏が交渉の矢面に立っていたら、自民党は苦しい戦いになっていたと見る向きもある。
プロレスの「バトルロワイアル」を知っているだろうか?多人数のレスラー(例えば16人ぐらい)が団体戦で闘い、最後の一人が優勝するというゲームである。弱いものが団結して、強者をまず排除するのが当たり前の戦略になるから、強者は目立たぬように、初めは逃げなければ殺られてしまうのと同じ理屈である。
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