台湾新政権の足を引っ張り続ける中国の思惑 蔡英文を中傷する女性蔑視記事まで流布

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去る1月に行われた台湾の総統・立法院選挙で民進党が大勝して以来、中国は、民進党政権では中国との関係が悪化するという印象を植え付けようとしてきた。蔡英文総統の就任の翌日、中国の台湾政策の元締めである国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官が台湾側との対話について、蔡英文政権が「一つの中国」原則を明確に受け入れない限り対話は継続できないとの考えを示したのもその一例だ。

この発言の背景には、台湾側の事情で対話が中断されれば、新政権と中国との関係のみならず、中台双方が対話を続けることを望んでいる米国との関係も悪化するという読みがあったのだろう。米国は、民進党の陳水扁総統の時から中国との関係が悪化することを懸念していたが、蔡英文に対しては最近好意的な姿勢を見せていた。中国は蔡英文総統でも民進党政権の性格は変わらないということを米国に示そうとしたのだ。

中国がWHOに「妨害」を働きかけ

また、蔡英文総統就任から3日後、ジュネーブでは世界保健機構(WHO)の総会が開催され、台湾からも新政権を代表して新「衛生福利部長(我が国の厚生労働相に相当する)」がオブザーバーとして出席した。

台湾は毎年WHOの総会に出席しているが、今年は招待状がなかなか届かず、総会の開催が間近になってようやく招待状が送られてきた。それには中国の「一つの中国」主張をリマインドさせる文言が書かれていたが、台湾側はこれには構わず出席したのでWHOでは例年通りの扱いが一応確保された形になった。

詳しい事情は不明だが、中国がWHOに対し何らかの働きかけを行っていたことは確かである。今年は、「一つの中国原則」を台湾が認めなければ招待されないだろうと中国の高官が話したという報道もあった。

中国の行動はこれで終わらなかった。

24日、「蔡英文の正体(起底蔡英文)」と題する論文が新華社傘下の『国際先駆導報』に掲載され、新浪、網易、捜狐などの大手サイトもそれを転載した。新華網も一時転載したと言われている(米国に本拠がある『多維新聞』5月25日付)。

執筆者は台湾との関係の窓口である海峡両岸関係協会の理事、王衛星であり、その内容は、蔡英文が独身であることを理由にしてその行動と政策を論じるという非常識なものだった。それだけでもこの論文の程度の低さが分かるだろうが、王衛星は蔡英文を「女政客」と呼び、独身だから「愛情など情感で引き留められることがない」「家族の制約もない」「子供のケアをする必要もない」「その行動は偏っており、身勝手であり、また極端になる」などと暴言を書き連ねた。

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