この改訂が中国寄りであるのは誰の目にも明らかであり、台湾人の間では批判が強かった。新政権はいの一番に教科書を元に戻した。
蔡英文政権は、もうひとつ重要な決定をした。週明けの月曜日(5月23日)には、2014年春に立法院などを占拠した学生126人に対する刑事告訴を撤回すると発表したのだ。
学生が問われていたのは、中国とのサービス貿易協定に関する立法院での審議を馬英九政府が一方的に打ち切ったことに抗議して多数の学生が議場内に侵入し占拠した事件であり、学生の行動は「ひまわり」が運動のシンボルとなったことから、「ひまわり学生運動」と呼ばれた。
馬英九政権は学生が違法な行為をしたとして厳しい姿勢で対処したのだが、台湾人の間では、それは形式的なことで、政府の対応は政治的に問題があったとして学生の行動に同情する人が多かったので、新政権は告訴を撤回した。
日本との海洋協力対話を立ち上げ
蔡英文新政権は同じ日に、日本との海洋協力対話を立ち上げると発表した。その際、沖ノ鳥島について馬英九前政権が「岩礁だ」と断定していたのを修正し、「法律上の特定の立場を取らない」との見解も示した。李大維外交部長(外相にあたる)は25日、立法院での質問に対し、台湾の立場は「岩礁と主張することでなく、国連の決定を尊重する」ことだと答弁している。
沖ノ鳥島問題が起こったのは、台湾の漁船が違法操業したため日本の海上保安庁の巡視船によって拿捕されたのがきっかけであったが、馬英九総統は単に漁業問題として処理するだけではすまさず、「沖ノ鳥島は排他的経済水域を主張する根拠として使えない。単なる岩礁に過ぎない」と問題を拡大していた。
しかし、蔡英文新政権は、漁業問題として台湾漁船の利益を確保すればよい、法的問題で日本と争う必要はないと判断したのだ。
蔡英文新政権の動きは早く、鮮やかだ。その反面、中国は不満を募らせている。
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