パナマ文書は近代国家への信頼を崩壊させた セドラチェク氏と水野和夫氏、「危機」を語る

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水野:経済学的な観念は、シュメール王国時代から存在していたにもかかわらず、欧米流の近代経済学が近代以前の経済活動を無視してきたのはなぜだと考えますか。

セドラチェク:私は数字に偏ることで中立を装う近代経済学を批判していますが、経済には、普段は対立する国家同士を結びつけ、協力させるすばらしい力もあります。

歴史を振り返れば、国の統一に最大の力を発揮したのは、政治・文化・宗教よりも経済ではないでしょうか。「戦争ではなく貿易を」。それは欧州統合の理念とも共通するはずです。

ソフトランディングは可能なのか

――世界経済は成長に向けてアクセルを踏み込んでいます。その状況で、成長志向経済をソフトランディングさせ、より穏やかな経済に移行することは可能でしょうか。

水野:歴史的に、あるシステムが機能不全になってから、すぐに次のシステムへと移行できた例は少ないと思います。いくつかのシステムを試行錯誤して、うまくいったものに乗り換える過程を経るなかでは、衝突も起きます。

歴史の教訓に学ぶとすれば、とにかく戦争にしないこと。それさえかなえば、ソフトランディングしたと言えるのではないでしょうか。

「とにかく戦争にしないこと」

セドラチェク:昔と今の違いのひとつにインターネットの存在があります。現代は、インターネットによって、接続料金さえ払えば、いろいろな情報を入手できます。

私は、自由な議論・意見交換の場としてのインターネットの機能が、戦争回避につながることを期待しています。20世紀に2つの大戦を経験してきた欧州の和解は、話し合いによる共存が可能であることを示していると思います。

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