竹中平蔵(上)「リーダーに必要な3つの資質」 世界のリーダーと日本のリーダーの違い

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小泉さんを見ていて思うのは、やはり基本が大事だということだ。基本に忠実かどうかというのが、すべてだと思う。

小泉さんが国民から支持された最大の理由は、憲法どおりにやった点にある。たとえば、小泉さんは、派閥を飛び越えて組閣したが、これは憲法通り。なぜなら、大臣を指名する権限は、一にも二にも総理にあるからだ。そして、郵政民営化法案が否決されたときには解散した。これも憲法どおり。そのとき反対した閣僚は罷免して自分が兼務した。これも憲法どおり。だから、小泉さんのやり方は異端ではなく、極めてオーソドックスだ。

そして、橋下さんも基本をすごく見ている。「次の選挙で、自民党が勝ち、今落選している議員が戻ってくるだけでは、何も変わらない。それよりも、この国の根本的な問題は、統治機構にある。そこに切り込むことが重要だ」と基本に戻って主張しているから、国民に響くのだと思う。

古典とは、問題解決のための書

基本を見る力を養うには、古典を読むのがいい。

みんな誤解しているが、少なくとも経済古典に関して言えば、古典は最初から古典だったわけではない。発行当時は非常に新しい本で、目の前にある問題の解決のために書かれたものだった。内容が斬新だっただけに、著者たちはすさまじい批判にさらされ、その批判と戦う必要があった。

アダム・スミスが『国富論』を書いた目的は、「いかにしてこの間違った重商主義をやめさせるか」「いかにして植民地アメリカを独立させるか」という点にあった。ケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』を書いたのは、失業という問題を解決するためだった。

だからその時々の状況で、どういうふうに問題を解決しようとしたか、どう激しく戦ったかを学ぶために、古典は役立つ。古典を読むのは、非常に面白くてロマンがある。

古典の著者たちは、象牙の塔にこもっていた人たちではなく、目の前にある社会の問題と戦った人たちだ。実際、ケインズも「経済学者の本当の仕事は、今の問題を解決するための短いパンフレットを書くことだ」と述べている。

(撮影:梅谷秀司)

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