竹中平蔵(上)「リーダーに必要な3つの資質」 世界のリーダーと日本のリーダーの違い
トップには特別な資質が必要になる。その資質は、日本かアメリカかに関係なく、世界共通だと思う。
哲学者の梅原猛さんは著書の『将たる所以』の中で、日本の歴史上どんなリーダーがいたかを書き綴っている。この本を私なりに解釈すると、リーダーには3つの条件がある。
1つ目は、自分の頭で世界や将来を見通す洞察力を持っていることだ。たとえば、「アメリカはこれからどう変わるか」「欧州の財政危機はどうなるか」「ライバル企業はどう動くか」といったテーマを頭の中で整理して、それぞれに洞察を持たないといけない。この力がないと「今どうすべきか」という判断を下すことができなくなる。
2つ目は、自分の考えをステークホルダーに語って、説得する力だ。経営者であれば、部下や株主や債権者や銀行を説得する必要がある。今ふうの言葉で言うと、説明責任だ。
優れたリーダーは、みな話がすごくうまい。「私は口下手です」と言う人がよくいるが、そういう人に対しては、「君はリーダーに絶対なるな。君みたいな人がリーダーになったら、みんなが迷惑する」とあえて挑戦的に言っている。リーダーは説得力がないと駄目だ。
3つ目が、組織を動かす力だ。人は各自いろいろな想いを持って働いている。お金に反応する人もいれば、出世に反応する人もいれば、子供の受験のために頑張っている人もいる。そうした一人一人に対して、上手くインセンティブを与えて、組織を作る力が求められる。
小泉純一郎元首相は、見事にこの3つの力を備えていた。
橋下徹大阪市長も、高い洞察力を持っているし、独特のコミュニケーション能力を持っている。だから、彼に今問われているのは、うまく組織を作る力だ。彼は、自らが生み出した社会現象を政治的ファクトにしなければならない。その過程で乗り越えるべきことは多くあるだろうが、彼にはとても期待している。