立ちはだかる年収300万円の壁
男性の場合、結婚するために、どの程度の収入が必要となるのでしょう?
内閣府が実施した「結婚・家族形成に関する調査」の中にある、「年収階層別の既婚率」を見ると、年収と婚姻率の間に明らかな因果関係が見て取れます(対象者は20代と30代の男性ですが、学生は集計から除かれていますので、求職者を含む社会人に限定されたデータです)。
これを見ると、男性の場合、20代・30代ともに、年収が多くなるほど既婚率が高くなる傾向が顕著に現れています(20代では、年収が600万円を超えると既婚率が下がっていますが、収入に余裕があるので、「選び急がない」ためかもしれません)。
一方、年収300万円未満では、20代・30代ともに、既婚率は9%前後。これは、次に既婚率の低い年収300万〜400万円の男性と比べても、17%ほど差が開いており、極めて低い水準だということができるでしょう。
男性の場合、年収300万円に、結婚を阻む壁が立ちはだかっていることを、この調査の結果から読み取ることができます。
では、そもそも年収300万円未満の男性は、どのくらいいるのでしょうか?
国税庁の調べでは、直近の2010年の段階で、全男性納税者の23.4%が年収300万円未満となっています。
また、経年で見てみると、1997年の14.6%が最低で、以後、年収300万円以下の男性の割合は増加し続けています。この十数年で、年収300万円以下の男性の割合が9%も増加しました。
ちなみに付け加えておくと、02年に始まったとされるいざなみ景気の期間にも、景気が回復していたのにもかかわらず、年収300万円以下の低所得男性の比率は減ることはなく、むしろ急ピッチで増加していました。
年収の変化はこの15年間に起こった雇用形態の変化ともちろん無縁ではありません。この間、いかに非正規雇用者が安いコストで雇用されていたのか、このデータからも明らかです。
先の「結婚・家族形成に関する調査」に、雇用形態別の婚姻状況も掲載されているので、こちらも見てみると、男性の場合、正規雇用者の既婚率が27.5%なのに対し、非正規雇用者の既婚率は4.7%でしかありません。
この統計では、非正規雇用者で結婚している人は、20人のうち1人ということになります。「男性不況」の進展に伴い、男性の非正規雇用者が急増しているのはすでに説明したとおりです。
昨今の労働市場の動向を鑑みると、今後、正規雇用者がにわかに増加するとは期待しがたく、非正規雇用者が増加する傾向は続くものと考えられます。
そして、その結果、ますます結婚することが難しくなる男性が増えそうなのです。
どんどん遅くなる初婚年齢
年収300万円に届かない低所得男性が増加する中、わが国では、「結婚していない」男性が増えています。
厚生労働省が発表している日本人男女の初婚年齢のデータを見ると、男女とも初婚年齢が年々上がっているのが、一目瞭然です。
特に、86年から98年の間には注目すべき現象が起きました。
この間、男性の初婚年齢は28.4歳から28.5歳とほとんど変化がなかったのですが、対照的に、女性は25.7歳から26.7歳へ、じわじわと初婚年齢が上がっています。
86年といえば、男女雇用機会均等法が施行された年ですので、この期間の初婚年齢の上昇は、働く女性の増加が主因であったと推察されます。