7月参院選、四国・九州の「当落」はどうなるか 香川では共産候補が野党統一候補に浮上

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佐賀はどうか。民進党佐賀県連は奈良県で衆院議員と参院議員を務めた中村哲治氏の公認を決定した。奈良県選出の国会議員だった人物が別の県から出馬するのは異例のこと。ましてや中村氏は2012年に民主党を離党し、小沢一郎氏の日本未来の党、生活の党に合流したこともある。

そんな中村氏を佐賀県で擁立しようとしたのは、民進党の原口一博衆院議員と大串博史衆院議員だ。野党共闘ができる候補がなかなか見つからない中、奈良県では次の場が見つけにくい中村氏に白羽の矢を立てたのだ。

落下傘候補がすんなり勝てるほど甘くはないが、1874年に佐賀の乱が起こった土壌で、中村氏がどれだけ健闘できるのかが注目される。

長崎は強力な二世が立つ。統一候補の民進党の西岡秀子氏は文部大臣や参院議長などを務めた故・西岡武夫氏の長女。小柄なところが父親そっくりだ。西岡氏は学習院大学を卒業後、3年間私企業に勤務し、父の秘書を務めた。

そもそも長崎県は、衆参両院で自民党が議席を独占するいわば「自民王国」。自民党は県議会でも、議席の過半数を維持している。現職の金子原二郎参院議員は知事経験もあり、選挙に負けたことがない。98年の知事選には西岡氏の父・武夫氏と対戦し、勝利を得ている。

みどころは、西岡氏が自民党にどこまで迫れるかということと、亡父の雪辱を晴らせるかという点だろう。しかし選挙協力したとはいえ、内部には不協和音が聞こえており、4月13日の総合選対の初会合には、共産党と生活の党の関係者の姿はなかったという。

鹿児島は自民党の野村哲郎参院議員に無所属で連合出身の下町和三氏が挑む戦い。民主党(当時)鹿児島県連が、今年1月に擁立したのが皆吉稲生元衆院議員。他の野党からの調整要請に応じなかったので、社民党などが反発していた。民進党と社民党は下町氏の推薦を決めたが、共産党は表向きには推薦や支持を自粛。だが下町氏の当選に向けて、積極的に動く予定だ。

スキャンダルがどう響くか

沖縄は波乱含み。島尻安伊子沖縄北方領土等担当大臣が抱える問題は多い。まずは今年2月の会見で「歯舞」を読み間違った事件、夫の昇氏が理事長を務める文科省傘下の専門学校から寄付を受けた問題、そしてタレントの今井絵理子氏が自民党の比例区候補として擁立されたことだ。今井氏の婚約者に風営法及び児童福祉法違反で逮捕歴があったのだ。

これは今井氏個人の問題だが、島尻氏にも飛び火する可能性がある。というのも、沖縄県出身の今井氏は、選挙区と比例区で島尻氏とタグを組むことになるため、こうした犯罪を嫌う女性票が逃げてしまうことが想定される。とりわけ、自民党に強力にサポートしている創価学会婦人部は、これを許せるはずがない。その信頼をどうやって取り戻すのか。島尻氏にとって自分の問題ではないだけに、やっかいなことになる。

さらに沖縄県うるま市で女性会社員が殺害され、米軍属が逮捕された件では、1995年に起こった沖縄米兵少女暴行事件と同様に、在日米軍への批判が強まるだろう。そもそも自民党が好調だった2013年参院選と2014年衆院選ですら、与野党候補の票数が切迫しているのに、こうした事件が相次ぐと、ますますその傾向が強くなるに違いない。
 

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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