意外なことに物乞いもかなり多い。実際の数が多いのか知らないが、極めて”Visible"である。
彼らはセントラルや尖沙咀のビジネスおよび観光の中心部の道路に座り込みおカネを乞うのだが、彼らの姿には日本とは随分違う特徴がある。腕や足が切り取られていたり、顔中がやけどでただれていたり、両脚が残酷なまでに折れ曲がっていたり……。闇組織に物乞いのために動員されているのではないか、と思うくらい”凄惨な姿”の物乞いの方が多いのだ。
ミッドタウン並みのすばらしい5つ星ビルが立ち並ぶ繁華街で、エメラルドグリーンのビクトリア湾を望むセントラルのIFC(インターナショナルファイナンシャルセンター)の美しい桟橋で彼ら・彼女らの姿を見るところに、香港の貧富の格差が象徴的に現れているようにも思える。
エビスビールは80円~完全無関税・低酒税の恩恵
さて、そんな物価が高そうな香港で、そんな低所得で生きていけるのか、と皆さんは心配するかもしれない。しかし実は香港では、カネがなければないで、それはそれで生きていけるのだ。というのも、香港には物価が世界最高水準に高い金持ち経済圏と、物価が極端に低い経済圏が共存しているからだ。
たとえば、カオルーン駅の高級住宅棟の中にあるオーガニックスーパー360ではりんごが1つ500円で売っているが、そこから15分歩いたテンプルストリートでは6個200円くらいで売っている。私の体重が3年で20キロ増えるきっかけにもなった、非常においしい雲呑麺、担担麺、そして小龍包も200円かそこらで立派に食べられるのだ。
象徴的な例は、サラリーマンの永遠の“ちょっとした贅沢”エビスビールの値段である。生産国の日本では一缶300円だが海を渡った香港では、なんと80円で入手できるのだ。
ワインやビールやブランドバッグが世界一安い国。空港の免税店で買うブルガリの時計と市内の価格が同じ国。それが香港なのである。何かにつけて自由貿易を徹底し、世界に門戸を開いたおかげで人々はつねにグローバル競争にさらされるが、代わりに世界中から関税なしで安価に品物を買うことができるのだ。
これは国民の多大な負担でもたらされる莫大な補助金と関税によって、競争を歪め、グローバル競争から一部の産業を守ってきたがゆえに、農業やサービス産業の国際競争力が低くなってしまった国々に、多くの教訓を与えてくれる。
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