ジニ係数、この言葉は皆さん何度も聞いたことがあるかと思うので、釈迦に説法はしない。ただ私の備忘のために言っておくと、この数字が大きければ大きいほど貧富の格差が激しいということになる。
さて、以下に3つの国のジニ係数の数字(CIAのデータを参照)がある。
「37.6」「47.3」「53.3」
どれが香港、東京、シンガポールの数字だろうか?
この文脈から賢明にもご判断されたように日本のジニ係数は「37.6」で、他の金融センターに比べ格段に低いのだ。すなわち、この数字からは、東京が他都市に比べ、金持ちに対し重税であること、所得分配が手厚くされてきたこと、貧富の格差を嫌うことが読みとれる。
マクドナルドの時給は300円~低賃金だが完全雇用
わかりやすい例で言えば、インベストメントバンカーやヘッジファンドの上級幹部は、香港のほうが東京よりよっぽど高い報酬をもらっている(もはや東京ではなく香港にアジアパシフィックの本部があるのだから当然だ)。
これに対し、マクドナルドで働く高校生の時給や、病院でバイトする看護婦の卵さんの時給は300円であり、ワーキングプアが叫ばれる日本の最低賃金の2分の1以下である。しかも、雇用主は自由に解雇ができるのだ。
この格差は必ずしも悪いことばかりではなく、労働価格および投入量がビジネスのファンダメンタルに応じて自由に調整できるおかげで、ほぼ完全雇用が実現できている。香港の失業率は3%、シンガポールは実に2%だ。そして経済成長率はそれぞれ5%を超えている。これは世界の企業に“ビジネスがしやすい都市”として選択された結果である。
規制によって、高い賃金水準と余剰人員の雇用を企業に押し付け、本来ならば政府が担当すべき福祉や社会保障を、民間企業に押し付けてしまっている。その結果、実質的な社内失業率や若年失業率がアジアの主要都市に比べ高くなっているとしたら、それこそ本末転倒ではなかろうか。これは規制によってタクシーの初乗り運賃が高くなっているせいで、空車タクシーの列も世界一長くなってしまっているのと共通している。
今後の日本社会は高齢化による労働生産性の低下も相まって、所得水準にさらなる下方圧力がかかるだろう。私が働くグローバル金融の世界でも、資本は安い労働力と高い生産性を求めて国際間で移動してきた。労働者は宿命として、他国の安い賃金および自分の労働力を代替する技術革新に挟まれたサンドイッチ状態で戦わなければならないのだ。
よっぽど自分たちにしかできない参入障壁のある分野で高い生産性を築かないかぎり、賃金が高かった国の賃金は下がり続け、グローバルな平均値に収束していくのが自然な流れだ。
こんなとき、「政府はしっかりしろ!」と言う人がたまにいるが、ジミー大西をまねるなら「お前も頑張れよ!」である。どれだけ頼りない人が政治家になっているかは重々承知のはずだ。これ以上、お上任せで待ち続けること自体が最大のリスクだろう。
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