「反対ばかりする人」は、実は頼りになる人だ こうすれば一転「強力な賛成者」に変わる

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松下さんは旅館で様々な企画を考えて展開した。松下さんの企画はメディアなどでも頻繁に取り上げられ話題になり、宿泊客にも喜ばれていた。しかし観光客数はなかなか増えない。旅館が頑張るだけでなく、さらに昼神温泉の地域全体が観光地として魅力的でなければならないことを松下さんは実感していた。しかし昼神温泉で松下さんの危機感を共有する人たちはごく数名に留まっていた。

ある日松下さんは、旅行会社大手・JTB中部で、地域と協業して魅力ある観光資源を開発している武田道仁さんと出会った。この出会いがきっかけとなり、さらに阿智村にいた数名の有志が中心となって、阿智村の隠れた強みである「日本一の星空」を核にした「日本一の星空ナイトツアー」のコンセプトが生まれていった。

しかしそれまで昼神温泉は「温泉」を売り物にしていた観光地だ。そこへいきなり「星を売ろう」という斬新な提案だ。周囲からは「真夜中にロープウェイを動かすなんて前代未聞だ」「そもそも真っ暗な中に観光客を連れて行くのは危険だ」という反対意見が圧倒的に多かった。

そんな中で松下さん達はプロジェクトを進めていき、「スタービレッジ阿智誘客促進協議会」設立までこぎ着けた。2012年8月1日、設立イベントを兼ねて説明会を行った。事前に主だった昼神温泉関係者に声をかけ、大きな部屋も確保して大々的に説明会を開催した。しかし参加者はたったの3名。実は当日、村で小さな祭があり、多くの人たちはその祭に参加したのだ。プロジェクト立ち上げ当初は、阿智村の人たちの大多数は「日本一の星空ナイトツアー」にほとんど無関心だったのだ。

少数精鋭の賛成者だけで小さな成果を

この阿智村の状況は、新しいプロジェクトに取り組む人たちにとって多くの示唆を与えてくれる。これまでにない新しい取り組みをする際、関係者の内訳は次のようになっている。

・賛同者:ごく少数
・反対派:少数
・無関心:圧倒的多数

ではこのような状況で、プロジェクトをいかに進めるべきなのか?

実績もなにもない立ち上がり段階だ。少数の反対派を説得しようとしても、彼らはなかなか納得しない。また圧倒的多数の無関心層はそもそも興味がない。そこで有効なのは、同じ危機感と目的を共有するメンバーだけで「連携チーム」を作り、進めることだ。阿智村の場合も、松下さんを中心に「このままでは阿智村の将来はない」という危機感を持ち、「星を売ろう」という目的を共有する数名の少数メンバーだけでプロジェクトをスタートさせた。

ここで重要なのは、変な平等意識を持ち込んで「最初が肝心だ。関係者の意見を満遍なく取り込んでおこう」と思わないこと。

あなたは新しいプロジェクトを立ち上げる際に、「できない理由」を列挙し、妨害するかのような発言をする人物がチームに参加し、閉口した経験はないだろうか?プロジェクト立ち上げ段階は、動ける人員も少ない。ある程度リスクを取ってスピーディにプロジェクトを前に進めて、小さな成果を出すことが何よりも必要だ。しかし「できない理由」を列挙して動きを妨げる人物がいると、限られた人員をそのダメ出し対応など、別の作業に振り向けることになる。そしてプロジェクトがなかなか立ち上がらず、新プロジェクトは往々にして失敗するのだ。

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