有効性と効率性
ビジネスの基本は、顧客が認める有効な差別化をどう作りだすのか、ということ。さらに有効なだけでなく、収益を生み出す効率性も必要です。有効性(顧客満足度)を高めようとすると経費や時間がかかります。そうすると収益率が下がり、ビジネスとしての効率性に問題が生じます。
つまり、有効性と効率性は両立のバランスが難しい、まさにトレードオフの関係にあるので、この2つをうまくバランスさせることが、ビジネスを継続させるための基礎要件ともいえます。
「会いに行けるアイドル」という新しいコンセプトで誕生したAKB48は、顧客満足度を高めるために、多人数で構成される「アイドルグループ・AKB48」というブランドのイメージを維持・向上していくことが求められます。この有効性に相当するところを、プロデューサーが顧客満足度を考慮し、現場に合わせて設計しています。
一方で、メンバー個々の立場になれば、現在のマネジメントとAKB48卒業後の将来の道を模索し、今からそれに備えた手を打っていくことも重要です。
そこでAKB48の活動を通じて育ったメンバーは、それぞれ芸能プロダクションに所属することで、個人の事情に応じてマネジメントがされています。
これにより、AKB48をプロデュースする側は個人のマネジメントを外部化し、顧客満足度を高めるためにAKB48そのもののマネジメントに経営資源を投入することができ、効率性を高めています。ですから、一定期間内に所属プロダクションを見つけることがメンバーには求められており、この外部化はルールにもなっています。
ここまで見てきたように、AKB48と京都花街は、有効性と効率性のバランスをとるための仕組みがまったく同じです。顧客満足度のマネジメントの責任者がプロジェクトチーム制を運用することによって顧客満足度を高め、一方で個々のメンバーのマネジメントを外部化しているのです。
忘れてはならないのは、この仕組みの源流は京都花街の起源、すなわち350年以上さかのぼるものなのです。AKB48の華やかさだけに目を奪われていると、目に見えるものしか見えず、その背後にある大きなビジネスの枠組みを見落としてしまいます。
AKB48と京都花街、まったくつながりがないように見える両者の比較から、日本のエンターテインメントのビジネスシステムについて、驚くほど似ている骨格が浮かび上がりました。
似ているのは「ビジネスシステム」だけではありません。次回は、両者に共通の基礎教育の徹底と専用劇場について、「一流の育て方」という視点から考えていきます。
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