シャープの失敗が映すニッポン電機の急所 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(第1回)
パワーゲームに陥りやすいデジタルな世界、ITビジネスで勝つには、不連続なイノベーションを起こす力が必要だ。
日本の会社は、要素技術ではいいモノをもっているが、不連続なイノベーションを起こすにはあまりにも連続的な存在。終身雇用と年功制で30年以上の歴史を持っている日本企業にはイノベーションは難しい。
IBMやGEは「あきらめた」
米国でさえ、歴史が古い大企業になるとイノベーションを起こすことができなくなっていく。ゼロックスはパロアルト研究所ですばらしい要素技術を持っていたが、イノベーションを起こしたのはアップルだった。GEはウェルチの時代にイノベーションをあきらめた。コンピュータや半導体をやめて、残したのは白モノと重電だった。マイクロソフトからもイノベーションは出てきていない。
IBMやGEのようにあきらめるというのは正しい戦略。GEは、日本が手本にしていた総合電機メーカーだった。そのGEがいつのまにか業態を変えてしまった。不連続なイノベーションをあきらめ、単純なパワーゲームも捨てた。コンピュータや半導体をやめて、残したのが重電と白モノだった。熱力学でメカトロ、摺り合わせが多いビジネスしか残さなかった。日本の電機メーカーもその道を行くべきだ。その領域に強みを持っているのだから。テレビなんかやめちゃえばいい。
パワーゲームは量の勝負なので、一見多くの雇用を作ることができる。だからそれをやりたくなる。しかし、裏返して言えば、固定費としての人件費を大量に抱えているということ。これはとても危険だ。