シャープの失敗が映すニッポン電機の急所 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(第1回)
買い手の自動車メーカーが「次の新車は年間10万台、5年間売れるから安くしてくれ」と言ってきても、それが難しいと思えば3万台でコストをはじく。そういう駆け引きで勝っていかないと儲からない。ルネサスの場合、親会社向け製品の交渉という問題もある。もともと親会社向けの商売はどうしても緩くなる。そうした風土で育ってきたルネサスは、外の自動車メーカーに対して1個1個の商材で厳密な収支管理ができるのか疑問だ。
そうした問題を指摘すると、「トータルで(収支管理を)やっている」と主張する。でも、トータルで儲かってない。1個1個の収支管理を考えないのは、過剰な共通コストを抱えているから。共通コストをまかなうために、余計な仕事をとってしまう。
こうしたビジネスモデルに関してはアメーバ経営に徹することです。できるだけ人件費・固定費を軽く、企業規模を小さくして、1個1個の商談についてアメーバ経営を徹底する。1個1個の商談で赤字商売は一切やらない。そうすると、親会社や顧客にはあまり都合のいい会社でなくなるかもしれないが、アメーバ経営に徹することがルネサス再生のカギだと思う。
すり合わせ信仰の罠
日本の製造業はすり合わせ信仰が強すぎる。すり合わせることはいい。だが、なんでもかんでも真面目にすり合わせればいいわけではない。すり合わせが向いている領域とそうでない領域がある。ハイエンド製品を作っている工場は匠の心ですり合わせを続ければいい。しかし、世界中で同じことをやろうとしたり、すべての商品でそれをやろうとするのは無理がある。
世界中ですり合わせをやろうとしても、工場の立ち上げに時間がかかりすぎる。モノが一定以上安くならない。安く作るには、がんばってすり合わせるよりは、ありものの部品でどこまで作り込めるかを設計段階で考えなければいけない。多くの日本メーカーは、これまではすり合わせでいいものを作ることに命かけてやってきた。が、できるだけ標準品、汎用品で組み立てて、本当に差別化する部分だけを特注品や特注マイコンでやるようにすべきだ。