「株は5月に売れ」は、常に正しいとは限らない 「小康状態の米国株」はやっぱりヤバい?
一方、1-4月に2%以上の下落となった場合には、5月のパフォーマンスは1.7%のマイナスになっている。やはり、4月までに下落している年は、5月も弱い動きになっているのである。ただし、5―10月のパフォーマンスは1.1%の上昇とプラスに浮上している。米国株が長期的には右肩上がりとなっていることが、このような結果になっている要因だと考えられる。
しかし、1-4月が±2%のレンジ内にとどまった場合には、意外なデータが確認できる。このケースにおける5月のパフォーマンスこそ0.6%のプラスだが、5-10月は0.2%のマイナスになっている。さらに、年末までのパフォーマンスも0.4%のマイナスである。1-4月に動きがあまりない場合には、手仕舞い売りが出やすいとも言えるだろう。今年の1-4月はいったん大きく下落したあとに戻していることから、その背景が空売りの買戻しであった可能性が指摘されている。
また、大手情報会社などの予測によると、第1四半期(1-3月)のS&P500採用企業の決算は、前年同期比で5.1%の減益となる見通しである。さらに第2四半期の1株あたり利益が悪化もしくは市場見通しを下回ると予測している企業は40社で、改善もしくは市場見通しを上回ると予測した企業の19社を上回っているという。第1四半期決算は、市場予想を上回るケースが多かったが、今後の業績改善が見込みづらいとすれば、株価の持続的な上昇への期待も、徐々に低下する可能性がある。
懸念されるのは企業業績だけではない。景気指標にもかげりが見え始めている。特にこれまで堅調だった雇用に変化の兆しが見られる点は無視できないだろう。景気に対して2~3か月の先行性があるとも言われる新規失業保険申請件数は、直近で5週間ぶりの水準に増加しており、さらに4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比16万人増と、市場予想の20万人増を下回った。
経済指標が上ブレれば「6月利上げ」も
ところが、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の見方は異なる。ニューヨーク連銀のダドリー総裁は「今回の雇用統計をさほど懸念していない」とし、年内2回の利上げは引き続き「妥当な予想」との考えを示している。FRB当局者は昨年の終わりごろから「雇用の伸びは今後鈍化する」と見ていたことから、今回の結果は「想定の範囲内」と見ているようである。またイエレンFRB議長は、「人口の伸びに即した経済成長ペースを維持するには、月10万人の雇用増で十分」としており、今回の数値は懸念材料になっていない可能性がある。
もしそうなら、今後の経済指標が再び上ブレるようだと、6月利上げの可能性が高まることも想定される。市場では、6月に実施される英国のEU離脱に関する国民投票の実施前の利上げは困難との見方もあり、利上げは早くても7月になると見ているようだ。しかし、そもそもドル安志向を強めている米国が利上げを実施し、自ら為替相場をドル高に向かわせるようなことをするとは思えない。結果的に利上げは先送りされ、ドル安基調を前提とした株価維持が図られることになるだろう。
ただ、株価維持を図ったとしても、米国株は、過去数年間にわたって上昇基調が続いた。そのため、今後もこの基調が続くかは、非常に不透明である。S&P500指数は4月20日に高値2102(終値ベース)をつけたあと、ジリジリと上値を切り下げている。今後、もし50日移動平均線(5月6日終値ベースで2045)を明確に割り込むようなことになれば、手仕舞い売りが優勢になり、いったんは下値を試す可能性が高まりそうだ。
現在、米国株は中期的なトレンド転換の岐路にあると筆者は考える。したがって、この数日間の米国株の動きには要注意である。米国株が崩れれば、世界的な金融不安が再び高まることは言うまでもない。
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