ガス事業展開へ頼りにされる日本の資金力 米国シェール革命と日本《5》

拡大
縮小

輸出量や価格によって最も大きな影響を受けるのが「メジャー」と呼ばれる国際石油資本。これまでメジャーは石油やガスの採掘・販売を通じ、驚くほど巨額の収益を上げてきた。そうした構造がシェール革命によって崩れる可能性がある。

すでに、メジャー以外で上流から下流まで押さえられるプレーヤーが出てきている。日本企業も含め、メジャーにとっての販売先だった会社がライバルにもなる。これはメジャーにとっては大きな脅威だ。将来的に自らの収益構造が取引先に知られ、価格交渉力が低下することを彼らは強く懸念している。この点が、今後どれだけ輸出が認められていくかの大きなポイントになりそうだ。

日本への輸出見込みは50%以上

――日本を含む非FTA締結国への輸出認可の見込みは。

断定的なことは言えないが、少なくとも50%以上はあるとみている。

仮に、非FTA締結国に対して認可が下りなくても、投資がムダになることはないだろう。ガスは日本国内だけに売らなければならないわけではなく、メキシコやカナダなどのFTA締結国に対して輸出することはできる。投資のリスクはそこでヘッジできる。

また、プロジェクトの商業化が進めば、市場への供給増加によって、国際的な天然ガス価格全体が下がり、日本はそこで恩恵を享受することもできる。

――日本企業による投資には他にどのようなリスクがありますか。

日本企業が投資しているプロジェクトが実際に商業化し始めるのは数年先であり、その時の天然ガスの国際的な市場動向が最大のポイントといえる。現在は市場価格が高く、日本企業は非常に高い輸入価格に苦しんでいる。しかし、もし数年先の市場価格が今よりも大幅に下がっていれば、「何もそんな大枚をはたいてまでシェールガスに投資する必要はなかった」ということになりかねない。

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