米国の経常収支は改善へ 米国シェール革命と日本《2》

拡大
縮小

 

--門田真一郎・バークレイズ証券外債ストラテジスト(米国担当)に聞く

 


第2回は市場関係者の観点から、特にシェール革命の日米経済に与える影響を中心に聞いた。

 

--シェール革命が米国経済に与える最大のインパクトは何ですか。

米国ではシェールガス生産の急拡大を受け、天然ガス価格が国際的に見てかなり低水準まで低下した。現在は100万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル程度で、日本の約18ドル、欧州の9.5ドルと比べてもはるかに安い。安価なエネルギー価格は米国の産業競争力向上につながる。

また、シェールオイルの開発も進み、石油も含めて海外からの輸入に依存する割合が今後低下していく。天然ガスと石油の純輸入数量は2000年代半ばから減少に転じた。天然ガスに関しては、今後10年以内に純輸出国となる見通し。エネルギー収支は米国の貿易赤字のほぼ半分(石油だけで11年で44%)を占めてきただけに、米国の貿易収支の縮小に直接的につながる。ひいては経常収支の改善にも役立つ。

■安全保障政策への影響も

もう一つのインパクトとして、安全保障政策への影響がある。米国家石油諮問会議は、北米の石油生産が35年には倍増する可能性を報告。米国エネルギー情報局(EIA)は20年には米国が消費する原油の半分が国産、82%がカナダやブラジルなどを含めた米州産になると予想している。つまり、米国の石油の供給先が中東から北米大陸に移ることで、特に軍事面での中東重視政策が変化し、国防費の削減につながる。米国では昨年から財政赤字削減のための強制歳出削減メカニズムが導入されているが、1.2兆ドルの削減計画の半分が国防費であり、シェール革命がその削減を後押しする。

その結果、経常赤字と財政赤字という「双子の赤字」が大きく改善する可能性を秘めている。米国経済のファンダメンタルズが強化される方向であり、為替面ではドル高を促す力となる。

 

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