結論が分かれたポイントは、Y社が、渡辺さん以外の他の管理職には異動①しか行わなかったにもかかわらず、渡辺さんに対してのみ、業務内容変化が著しいことの明白な受付業務への異動を命じたことにありました。
「降格異動」と「パワハラ」の分水嶺は
もうひとつのポイントは、裁判所が、降格の必要性自体は認定したことです。
裁判所は、「Y社において新経営方針の推進・徹底は急務であったことから、積極的に協力しない」中高年管理職を降格する業務上の必要性があったと認めました。
このように、降格自体に「業務上の必要性」が認められたことは注目すべき点です。裁判所の考え方によれば、一般論として、経営方針の策定は会社の裁量に属しているため、これに協力する管理職を昇格し、協力しない管理職を降格させることには一定の合理性が認められるということになります。
さらに、裁判所が渡辺さんと同様に「降格発令をされた多数の管理職らは、いずれも降格に異議を唱えておらず、Y社の取った措置をやむを得ないものと受け止めていたと推認される」と判断している点も注目に値します。
これを裏返すと、複数いる同等役職の従業員のうち、特定の1名のみを降格させた場合や、降格した複数の従業員の全員が降格の不当性を訴えている場合には、会社にとっては苦しい状況となることが多いといえます。
異動②が違法と判断されたのも、他の管理職と異なり渡辺さんのみを、従来の業務とは無関係であり、単純労務作業にすぎない「受付業務」に異動させたことが要因となったと考えられるでしょう。
会社の責任は、異動の必要性及び相当性の有無により、総合的に判断されることになりそうです。
人事異動もパワハラになりうる点に、注意が必要です。
では、社内の陰湿なイジメで従業員が亡くなってしまったらどうする?次回はそんなケースです。
(次回の掲載は11月28日です)
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