あなたの会社、パワハラしてません? ~知っておけば損をしない法律知識~

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裁判所は、1審では、川島さんの請求を棄却しました。しかし、控訴審では、遠藤部長の行為は許容限度を超えているとして名誉毀損の成立を認め、遠藤部長に対して、5万円の慰謝料の支払いを命じました。一方、パワハラに関しては、メールの内容が「叱咤する趣旨であり、表現として許容される限度は逸脱していない」と認定して、パワハラの成立を否定しました。

このケースから分かるように、部下を叱咤激励するためのメールさえ、パワハラの危険を孕んでいるのです。「お前には意欲も才能もない。やる気がないなら辞めてしまえ!」といった人格否定をしてしまうような強い表現であったり、1度ではなく何度もこのようなメールを送っていた場合には、パワハラが成立する可能性もあったでしょう。

部下の未熟な点が目に付けば、上司としては注意したくもなるものです。ただし、業務上の必要性・相当性を超えた熱すぎる体育会系の指導や、人格否定と紙一重の厳しい叱責は、場合によってはパワハラになってしまうかもしれません。ご注意下さい!

実は曖昧!?パワハラ認定は難しい!

実はパワハラについて、明確に規定した法律は存在していません。つまり、パワハラの定義そのものが非常に曖昧なのです。実際には、上司や会社による不法行為に該当するかどうかを裁判所が判断し、裁判所の判例の中で、定義付けされつつあるというのが現状です。

では、そのような曖昧な状況のもとで、「パワハラ」を起こさないようにするためには、会社としてどのような対策を講じればよいのでしょうか。

問題になることが多い場面の1つに、人事異動があります。基本的には、従業員の異動に関して会社には広い裁量が認められており、従業員はその辞令に従わなければなりません。ですが、あまりに広い裁量を認めてしまうと、不当人事がまかり通ってしまいます。反対に、会社の人事権が限定的になりすぎてしまっては、会社組織としての運営に支障をきたします。

このように、人事異動は労使双方にとって悩ましい問題です。次に紹介する事案では、人事異動が「パワハラ」と認定されたケースについて見てみましょう。

赤字続きで降格処分~人事異動は突然に~

渡辺さん(仮名・52歳)はY社に勤めて苦節30年。実直な勤務態度が認められ、ようやく管理職(課長)に昇格しました。そんな矢先、会社の経営が悪化してしまいました。管理職たちは新経営体制構築への協力を要請されました。

ですが、渡辺さんを含む在籍年数の長い、管理職の大半は、これに反対。会社側は新経営方針に協力する者を昇格させる一方で、渡辺さんを含む多数の管理職を降格させました。

具体的には、Y社は、渡辺さんを、ライン上の指揮監督権を有さないオペレーションズテクニシャン職(一般職)に降格させました(異動①)。ですが、渡辺さんの悲劇は終わりません。なんとその後、今までまったく経験したことのない総務課の受付業務に異動を命じられたのです(異動②)。

そこで、渡辺さんは、Y社による降格及び配転による一連の異動命令は、中高年管理職を退職に追い込むことを意図した、嫌がらせ行為(パワハラ)であるとして、会社側に対し、5000万円の損害賠償を請求する訴訟を提起しました。

裁判所は、渡辺さんの請求を一部認容し、Y社に、100万円の損害賠償責任を認めました。具体的には、最初の降格人事(異動①)については、会社側の人事権の範囲内であると判断しました。ですが、異動②については、会社側の裁量権の範囲を逸脱した違法なものだと判断しました。

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