本は「引きこもり高齢男性」の社会復帰を促す 全国で65館!広がる民間図書館の威力
現在、7人いるボランティアのうち、中心となっているのは71歳の工藤さん。図書館がオープンしている月曜日から土曜日のうち、週5日通っている。仕事の関係で妻が生まれ育ったこの地へ豊島区から引っ越してきた工藤さんは、本を借りに来てスカウトされた一人。最初はパソコンができないからと断ったが、難しくないと口説かれ、ボランティアを始めた。
「引っ越してきた当初は知り合いもいないし、子どももいないから妻と話すこともない。といって遊びに行くと金がかかる。でも、ここにいると時間もまぎれるし、ボケなくていいわ」とそっけない言い方をする工藤さんだが、このボランティアにやりがいを感じていることは言葉の端々から伝わる。ボランティアを始めてパソコンを使えるようになり、定期的にやってくる人たちと話し込むことも増えた。
「ほぼ毎日のボランティアは大変でしょう」と聞くと、「新しいボランティアだと常連さんが来づらくなるからね」と、誰かの役に立っていることを楽しんでいるようだ。現在、ほぼ毎日顔を出す常連さんは20~30人。学校が休みの季節には子どもたちの来館が増えるそうだ。
次に狙うのは空き家の「図書館化」
その工藤さんの友人で墨田区に住む75歳の堺さんも、工藤さんを訪ねて定期的にボランティアにやってきている。一時は週に3回、9時半から17時くらいまでと頻繁に通ってきていたそうだが、現在は少し減って週に1回。工藤さんが大変だから自分が手伝わなくてはというが、堺さんにとってその責任は快いものらしい。そうでなければ、朝11時オープンのはずのところに1時間弱かけ、9時半に来ることはあるまい。
取材時には母に連れられ、週1回やってくるという3歳児が工藤さんに抱っこをせがみ、にこにこと実に楽しげな様子。聞くと、ゼロ歳児の頃からもう3年通ってきているとのことで「子どもが大きくなるのは早いなあ」と工藤さんは満足気だ。袖ヶ浦団地では現在、利用者、ボランティアとも8〜9割は70歳以上だという。
情報ステーションでは高齢者を外に引っ張り出すだけでなく、今後は高齢者宅や空き家に人を呼び込むというやり方も考えている。「今後は住宅を利用する図書館を作っていきたい。それができれば、高齢者、空き家と2つの問題を同時に解決できます」(岡氏)。
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