本は「引きこもり高齢男性」の社会復帰を促す 全国で65館!広がる民間図書館の威力
図書館事業は、もともと岡氏自身が通学に時間がかかるため公共の図書館を利用できないことや、地元船橋が単なる通過点になっていることに気が付いて始めた。しかし、やっているうちに、本の持つ、ほかの商品にはない力に気づいたという。「本は年齢、性別、職業、所得を選びません。百貨店でも上層階に書店が入っているのは上の階に人を集めるシャワー効果を狙ったもの。本には人を集める力があるんです」(岡氏)。
民間図書館には公共の図書館にないメリットもある。公共図書館の利用するのには、さまざまな制約があるほか、飲食や料金を徴収するイベントができないなどの不自由もある。一方、情報ステーションは民間図書館を交流の場と位置づけており、本や図書館のボランティアを通じた出会いを演出できるようにしている。
ボランティアの中心は60歳以上
実際、ふなばし駅前図書館は、毎年恒例の12時間ぶっ続けの忘年会が開かれるなど、多様な人々が集う場所として発展している。中でも面白いのは、運営の中心となっているのが岡氏のような若者なのに対し、活動をサポートしているのはシニア層が多いことだ。
「10年前に始めたときには、ネットで若い世代に呼びかけていたのですが、2011年の震災以前に方向転換してアナログにシフト。本を借りに来る人に声をかけてボランティアをしてもらうようにしました」と、岡氏は理由を説明する。
移動が激しい学生より、地元に住んでいる人を中心にしたほうが、活動は安定する。シニアの知恵を借りたいと考えもあったのだろう。現在、登録ベースで750人ほどのボランティアのうち、中心となって活動しているのは60歳以上。開館時間の7割ほどをシニアが担っている。
アナログ的なやり方にシフトする中で岡氏はもう一つ、本にはほかのイベントには出てこない高齢男性を引き付ける力があることに気が付いた。最初は本を投げるように返却していた高齢男性に人手が足りないことを口実にボランティアを頼んだところ、実に熱心にかかわるようになるなど、こちらから声をかければかかわってくれる人が少なくなかったのだ。
その発見を確信に変えたのは、習志野市内の袖ヶ浦団地にある図書館の利用増である。同団地は50年近く前に入居が始まった古い団地で、独居の高齢者も多い。そうした高齢者が利用者として、ボランティアとして図書館に集っているのである。
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