太陽光発電を足掛かりに脱請負目指す大林組 目標は100メガワット

拡大
縮小

急ピッチで進む太陽光発電事業だが、これだけでは新規事業100億円には届かない。「新エネルギー事業の中では、地熱、風力、バイオマス、小水力などにも取り組みたい」と入矢社長は説明する。

とりわけ発電効率が高く、気象の影響を受けない地熱への取り組みに積極的だ。王子製紙の保有する北海道美瑛町で共同研究を開始、青森県弘前市でも地熱発電を組み込んだスマートシティ構想に参画する。風力発電は、陸上、洋上(着床式、浮体)について、大林組本体で技術開発を進める。小水力、バイオマスについても検討しているが、環境アセスメントや水利権、燃料調達などクリアしなければならない課題が多い。

発電参入が脱・請負への一歩に

「誰と」「どこで」組むかという問題もある。自然エネルギーは立地条件次第で採算が大きく変わるからだ。こういった問題をクリアして事業化につなげるには数年単位の時間がかかるため、当面は太陽光事業が突出する形になる。

エネルギー以外のビジネスにも触手を伸ばすが、これについても、大林組技術本部ビジネス・イノベーション室長を兼ねる入矢社長の肩に掛かる。とはいっても、本業からかけ離れたことをやるつもりはない。「建設の周辺事業を中心に、いくつか構想を練っているところ。年度内をメドに1~2件は具体的なものを出していきたい」(入矢社長)。

目先の収益としては、年商1兆円企業の中では小さな一歩にすぎない。が、国内建設事業は震災復興の一時的効果があっても、長期的には市場縮小トレンドを描き、競合激化による採算圧迫が続いていく。そうした中、発電ビジネスが「脱・請負」へ踏み出す大きな一歩になることは間違いない。
 

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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