星野リゾート、大手町温泉旅館の「次」の狙い 経営ビジョンを20年ぶりに変更した本音

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星野氏が考えたのは、周遊観光客を取り戻そうということではなく、既存の施設や温泉旅館「界」(かい)で、滞在色をより強めることにより、温泉保養客をさらに取り込もうということ。顧客満足度を高めることで、保養マーケットを大きくする戦略へと舵を切った。

その一方で、ビジネスホテルに流れた周遊観光客に照準を定め、観光客に合わせた都市型ホテルの運営を積極化していく。この2つが大きな戦略となっている。

今後の課題は人材育成のスピード

地方は従来の路線で、都市は観光型ホテルで、そして海外を「星のや」で開拓していくのが、当面の戦略といえそうだ(記者撮影)

その1号となるのが旭川グランドホテル。昨年買収したANAクラウンプラザホテルも、「契約が残っており、どうするかは未定」(星野氏)とするが、自社での運営受託に乗り出す可能性が高い。星野氏は「将来は各地方都市にひとつずつぐらいホテルを持ちたい」と語る。

戦線拡大に伴った新卒採用も積極化している。グループ全体の新卒採用は2012年から2016年まで計1019人に達し、従業員数は2000人を超えた。今後、2017年には340人、2018年には380人の新卒を採用する計画を立てる。

とはいえ、10人に1人が新卒だと、教育や研修を含め、現場の質のコントロールが難しい。特に4月採用は、繁忙期の5月の連休の負担が大きくなる。そのため、入社時期を4月中心から6月、10月、2月と年4回に増やす方針だ。

星野氏は、かつて東洋経済の取材に対して「わわわれぐらいの規模の会社だと、今後、人材育成のスピードが成長のボトルネックとなりうる可能性がある」と答えている。

事業領域の拡大とそれにあわせた経営ビジョンの転換。星野氏は次々と新たな手を打つが、それに見合った人材を育てることができるのか。今後の成長を占う大きな要素といえそうだ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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