“新人類”社長の「生きる意味」 新世代リーダー 村上太一 リブセンス社長
求人情報のミスマッチに興味を持って調べてみると、そもそもサイトに求人情報を掲載するのに数万円もかかる。これほどまで高い掲載料を払ってバイト一人を雇うのは費用対効果が明らかに悪い。結果として、企業側は掲載に消極的になり、求人側にまで情報が届かないという悪循環が生まれていた。
ならばその悪循環を変えればいい。
村上が思いついたのは、「成功報酬型」のビジネスモデル。掲載料収入に依存する求人情報サイトにあって、異例とも言えるやり方だ。
その構造は至ってシンプル。求人募集の掲載自体は無料で、多くの企業から掲載を募る。マッチングが成功した時点で、掲載料を企業から取り、その一部を「採用祝い金」として求人応募者に還元する。その差額がリブセンスの利益になる。この斬新な求人方法が評判となり「バイトが決まれば、お金が貰える!」と学生の間にクチコミで一気に広まった。
村上を起業へと駆り立てた幼い頃の原体験
そもそも村上が起業を志したのは小学生の頃にさかのぼる。友人達がテレビのアニメ番組に熱中するかたわら、村上少年の起業の原点となったのが、ヒット商品の裏側を追ったドキュメンタリー番組だった。
特に印象に残っているのが「ポカリスエット」の誕生秘話だ。ポカリスエットが発売された1980年代当時は、運動中の水分補給は禁じられており、「スポーツドリンク」という概念自体が無かった。また、当時は飲み物と言えば甘い味付けのジュースが主流だった。それだけに体の吸収効率を考えた薄い味付けは開発陣から不評だった。だが、社内の猛反対を押し切って販売にこぎ着け、「汗をかいた時に水分を補給するための飲料」というジャンルを打ち立てた。
「たった一つの商品で世の中が変わるかもしれない」。幼い頃の体験が深く村上に影響を与えた。そんな村上にとって「企業に就職せずに自ら起業することを選ぶのは自然なことだった」。その後、高校時代に感じたアルバイト情報サイトの使い勝手の悪さがリブセンスのルーツとなる。すでに早稲田大学入学時には事業計画書も書き上げ、起業する際の仲間のスカウトも開始していた。