「働いても幸せになれない日本」に生きる若者

労働はもう日本の貧困対策を担えない

藤田:だったら、失業期間中にそういうスキルを身につける訓練メニューを拡充すべきなのに、まったくそうはなっていない。

今野:おっしゃるとおり。安倍首相にいたっては、「失業なき労働移動」というトンデモ発言まで飛び出すのだから、始末に負えません。「失業なき労働移動」なんて、「なんでもいいから、とにかく仕事をしろ」ということしか言っていない、本当に貧しい国で、独裁者がやるような政策です。

しかも、この政策はもう一つの重大なミスマッチをも放置します。それは、日本の労働環境が過酷すぎるということです。労働時間に上限規制がなく、サービス残業も当たり前。過酷な労働は若者のうつ病を蔓延させ、少子化をも進めてしまっています。ブラック企業は、言ってしまえば「人類とミスマッチ」なのです。それなのに、ただ「転職すればいい」というのはあまりに無責任です。

藤田:ブラック企業を転々と移れと。

今野:失業期間というのは、再訓練期間なわけですよね。産業構造が変われば、社会で必要とされる技術やスキルも変わる。だから、ふつうの国の立場から見れば、失業期間に新しいスキルを身につけさせて、時代に見合った仕事に就いてもらうほうが、税収も増えるし、生産性も上がるんです。ところが、「失業なき労働移動」は「再訓練期間は不要」と言っているんだから、日本亡国論もいいところですよ。

藤田:ヨーロッパは、失業保険の給付期間が長いので、その期間にしっかりとした職業訓練を受けたり、大学に入り直したりすることができますよね。だから、産業の変化に合わせて、労働者も移動していきます。ところが日本だと、失業のリスクが高すぎるので、長期にわたって、低賃金の労働に縛り付けられてしまうんです。

就労支援する側が、非正規雇用という衝撃

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今野:職業訓練校の講師から労働相談を受けたときは、衝撃を受けました。パソコンスキルを教えている講師が、3カ月の有期雇用だったんです。

藤田:福祉業界と同じですね。支援する側が非正規、不安定雇用、低賃金という……。

今野:そんな状態だから、失業者に対する就労支援も空回りしているんじゃないですか。

藤田:そう思います。社会福祉の世界でも、若者の就労支援に乗り出していますが、雇用の現場がわかっていないので、ブラック企業でうつ病になってしまった人を、またブラック企業に押し込むようなことが起きてしまっています。それでも就職が決まると、支援者は「よかった、よかった」と、就職祝いのパーティを開いて大喜びしてしまっている状態です。

あるいは、公的な福祉事務所の外郭団体に、パソナやテンプスタッフといった人材派遣会社が入っているから、生活困窮している若者を派遣労働者にする回路ができてしまっています。これなんて貧困ビジネスそのものですよ。

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