「働いても幸せになれない日本」に生きる若者

労働はもう日本の貧困対策を担えない

「失業率は低いが、労働環境は劣悪」と今野氏

藤田:バブル崩壊とともに、1990年代から徐々に雇用の劣化や派遣労働の規制緩和が進んでいきましたね。

今野:特に大きいのは、2004年の製造業派遣の解禁です。会社からリストラされた人たちが、「月給25万円以上可」という求人に誘われて、工場に吸い込まれていくわけです。

でも、フタを開けてみたら、お盆で工場が止まる8月なんて、手取り10万円以下というひどい話になる。「寮完備」と書かれていても、実際は3DKのファミリー向けアパートに3人詰め込まれて、月5万円ぐらい天引きされる。こういうことが実質的な「失業対策」として制度化されていったんです。これが元祖「求人詐欺」ですね。いわば、求人詐欺が2000年代の貧困対策として機能してしまったわけです。

挙句の果てに、2008年のリーマン・ショックがあって、100万人以上の派遣労働者が一斉にクビを切られ、貧困が可視化されるようになりました。しかしそれでも、雇用環境は劣化の一途をたどっていて、今度は劣悪な対人サービス業や小売業などで求人詐欺が横行し、日本の労働人口を吸引しています。国家が貴重な若い労働人口を、政策的にブラック企業に誘導しているようなものです。

いちばん大きいのはスキルのミスマッチ

「日本では、失業が貧困に直結することが理解されていない」

藤田:ブラック企業や求人詐欺の話をすると、決まって「だったら辞めればいいじゃないか」という反応が返ってきます。日本では、失業がそのまま貧困に直結することが理解されていません。失業保険も不十分だし、職業訓練や資格取得のメニューもあまりに貧弱で、再就職先もブラック企業になってしまうわけです。

今野:最近は、「人手不足なのになぜ働かないのか」という議論も目立ちます。でも愚かなことに、労働市場のミスマッチを心理的な要因でばかりとらえるんですよ。つまり、求職者が選り好みするから、人手不足状態になるんだと。

もちろんそれも少しはあるかもしれません。しかし、もっと大きいのは、スキルのミスマッチなんです。だって、いま人手不足になっている職種は、誰でもできる仕事ではないんですよ。トラックの運転手がいないとか、保育士がいないとか、具体的なスキルを持つ人がいないということが、ミスマッチの重要な原因です。

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