「働いても幸せになれない日本」に生きる若者 労働はもう日本の貧困対策を担えない

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今野:職を探している人は、よりによってヤバい求人票から選んでしまう。「なぜ、それを選んだの?」と尋ねると、経験不問とか年齢不問とか、要するに誰でもすぐに働けるから、というんですね。

求人詐欺で家族が共倒れしていく

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藤田:そこに、求人詐欺も横行しているわけですね。

今野:そう。求人詐欺の難しいところは、求人票を見るだけでは詐欺かどうかがわからないことです。たとえば、A社とB社があって、A社は残業100時間で20万、B社は残業なしで20万だとしても、求人票の段階では区別がつかない。入社した後にしかわからないんです。リクナビでもマイナビでも、残業代を含んだ金額を「月給」として平気で提示しています。国も取り締まっていません。ですから、私のような専門家が見ても、本当の月給は、まったくわからないのです。

藤田:求人詐欺の話も、本当は深刻に蔓延しているのに、ごくごく一部のブラック企業がだましているだけという認識だから、多くの人にとっては他人事にしか聞こえないんですよね。

今野:その認識は、圧倒的に間違っているんです。2014年に「ブラック企業対策プロジェクト」が実施した調査によれば、ハローワークで見つけた求人180件のうち139件、じつに77%が違法な内容でした。新卒の就活でも、同様に求人詐欺はゴマンとあります。

その最悪といってもいいケースが、過労死事件を引き起こした「日本海庄や」のケースです。この会社は「月給19万4500円」と募集していたにもかかわらず、入社直後の研修で、「給料の中には80時間分の残業代が含まれている」ことを説明していました。これは時給換算すると、1時間当たりの時給が、ほぼ当時の最低賃金なんですよ。

日本海庄やの事例は、氷山の一角にすぎません。同様のことが、飲食、小売、介護、保育、ITといった業界では当たり前のように行われています。これらの下層労働市場では、月に100時間残業して、ギリギリ生きていけるような賃金体系になってしまっているんです。

藤田:そういう職場でボロボロになって辞めた人が、社会福祉を頼ってやってくるわけです。うつになってしまった人だと、簡単に社会復帰もできない。そうなると手立ては、社会保障か、親が支えるぐらいしかないんですよ。

今野:親が支えたら、共倒れですよ。

藤田:実際、そうなんです。わずかな年金では、自分たちと子どもの生活を賄えないから、貯金を切り崩さなければならない。貯金がなければ、生活保護ということになるけど、日本では生活保護を受けるのも、非常にハードルが高いわけです。

(構成:斎藤 哲也、撮影:風間 仁一郎)

(後編に続く)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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