「グローバル人材」の現状 2013年度新卒採用に見る
●海外留学経験者が多い大企業の内定者
海外留学を経験した学生は語学力や異文化体験が評価されるが、内定学生のどの程度が海外留学を経験しているのだろうか。
図を見てもらいたい。留学経験者の採用比率の調査データを読むと、業種の差は小さいが、規模別で大きな違いがある。規模が大きいほど留学生採用の比率が大きく、小規模になると比率は小さくなる。
「1001名以上」の企業の3分の2は海外留学経験学生を採用しているが、「300名以下」になると留学生経験学生を採用する企業は4分の1にすぎない。
ただ実際には「海外留学は採用基準ではない」とする企業が多く、海外留学経験者を積極的に採用している企業は、全体からすればそれほど多くはない。結果的にこういう数字になっているものと思われる。おそらく留学経験のある学生は、自分の強み(語学力)が生かせそうな企業に応募し、そういう企業は規模が大きいところが多いということではないだろうか。
また海外留学する学生は、前に踏み出す力が強いと評価され、採用されることが多くなるとも考えられる。
図表5:2013年新卒採用の内定者に占める日本人留学生の割合
(全体規模別)
●増えている海外留学を経験した学生の採用
外国人採用については、急増しているわけではないというデータを先に紹介したが、海外に留学した学生の採用は間違いなく増えている。どの企業規模でも「増えている」が「減っている」を上回っており、規模が大きくなるとその傾向が強まっている。
ただ海外留学といっても内容やレベルは千差万別。数カ月の短期語学留学も海外留学に含まれている。この経済環境下での保護者の経済的な余裕のなさや、学生の内向き志向の影響などから、長期留学の学生数自体は大きく減少している。
OECD(経済協力開発機構)などの統計を基にした日本人の海外留学者数は、ピークの04年には8万2945人だったが、09年には5万9923人にまで落ち込んでいる。日本人留学生が多かった時代には、企業はそれほど興味を持たなかったのに、減少に転じるや「グローバル人材」としての採用ニーズが高まるという皮肉な現象が起きている。官民挙げて、日本人留学生を増やす施策を講じていくことが求められている。
図表6:日本人留学生採用の増減(全体規模別)
(本社:東京千代田区、所長:寺澤康介)
人事のプロを支援するポータルサイト「HRプロ」を運営するHRプロ内の調査・研究部門。企業・団体のHR(人事)領域に関する調査、研究を行う。外部の調査機関による調査研究結果も紹介するなど、「開かれた研究所」を志向する。「HRプロ」内に、新卒/中途採用、教育・研修、労務、人事戦略などの業務に役立つ調査レポートを掲載している。
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