今回の災害は、直下型地震の恐ろしさをあらためて突きつけた。日本の新幹線は高性能の地震検知機能を備え、巨大な地震が遠方で起きた際は、最初に襲ってくる小さな「初期微動」をとらえて、遅れてくる大きな「主要動」の到達前に走行中の新幹線を停止させることができる。
2011年3月の東日本大震災の際、東北新幹線は試運転中の列車が仙台駅構内で脱線したものの、営業運転中の27本はJR東日本の早期地震検知システムで全列車が緊急停止し、事なきを得ている。
しかし、内陸型の活断層が引き起こす直下型地震は、初期微動と主要動がほぼ同時に襲ってくるため、検知システムの作動が間に合わない。今回の地震でも、回送列車の運転士が揺れを直接、感知して緊急停止したと報じられている。
営業運転中の新幹線の脱線は、やはり直下型の新潟県中越地震(2004年10月)で上越新幹線「とき325号」が脱線した例に次ぎ2度目という。「とき325号」は時速約200kmでの走行から急停車したものの、10両中8両が脱線した。今回の回送列車は時速約80kmで走行中だったが、全6車両が脱線してしまった。揺れの激しさがうかがえる。
「展開予想できない」異例の地震
気象庁は4月14日の地震を「平成28年(2016年)熊本地震」と命名したが、事態はその後、気象庁も「展開が予想できない」と発表する異例の展開をたどった。立て続けに震度4~6強の地震が熊本地域を襲い、16日未明になって、熊本市中心部から東へ10kmの益城町役場近くを震源とするM7.3の地震が発生した。最初に命名されたM6.5の「熊本地震」に比べ、地震エネルギーは約16倍に達し、規模では阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震に並んだ。
後にこの地震が熊本地震の「本震」に位置付けられ、14日の地震はこの地震の「前震」と呼び名が変わった。益城町は「前震」「本震」とも震度7を観測。同じ場所を震度7の地震が2度続けて襲ったのは観測史上、初めてという。
日奈久断層に刺激される形で、布田川断層も活動を始めたとされ、西日本を横断する巨大断層「中央構造線」に沿う形で、熊本地域から阿蘇地域、そして北東の大分県方面にも地震活動が広がった。
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