新幹線、地震の「死傷事故ゼロ」は幸運だった それでも安全対策は万全といえるのか
4月14日に起きた熊本地震(マグニチュード6.4)で、九州新幹線も大きな被害を受けた。高架橋の柱に亀裂が入ったり、防音壁が落下したりするなど構造物損傷もさることながら、大きな衝撃を与えたのは新幹線列車の脱線だった。
21時26分、回送列車として熊本駅から熊本総合車両所へ向かっていた九州新幹線「800系」が、地震のショックで脱線した。6両編成すべての車両が脱線したというほどの揺れの大きさだった。
九州新幹線を含む日本の新幹線は、「早期地震検知システム」を導入している。走行中の列車が初期の小さな地震波を検知すると、自動的に非常ブレーキがかかる仕組みだ。このため大きな地震波が到来する前に、停止ないし減速することができる。ただ、今回のような直下型地震では、いきなり大きな地震波が来るので、非常ブレーキをかけても間に合わなかった。
始発前に発生した阪神・淡路大震災
回送列車のため、乗客は乗っておらず、時速も80キロメートル程度に抑えられていたのは幸いだった。乗客を乗せて高速走行しているときだったら、大惨事になっていた可能性がある。
新幹線の歴史は半世紀を超える。その間、大地震にも何度か遭遇した。今のところ、地震による乗客の死傷事故は起きていない。それは過去の地震による被害を教訓にした、技術力の積み重ねであるが、幸運が働いた側面も少なからずある。地震対策の歴史を振り返ってみよう。
新幹線が最初に地震で被害を受けたのは、1978年の2月と6月に発生した宮城県沖地震だ(それぞれマグニチュード6.7、7.4)。建設中の東北新幹線・白石蔵王―一ノ関間、約120キロメートルの区間が被害を受けた。建設中ということで列車の被害はない。このときは高架橋や長大橋りょうが破損し、被害の調査結果はそれ以降の耐震設計の基礎なった。
1995年1月の阪神・淡路大震災(マグニチュード7.3)は、地震発生が5時46分。始発前だったことから、乗客への被害はなかった。ただし、インフラへの被害は甚大で、山陽新幹線区間では橋の落下が5カ所、高架橋の柱708カ所、電気設備も損傷した。この地震を契機に、柱のコンクリートに損傷が出ないようにする、損傷が発生しても鉄筋が変形しないように拘束する、といった既存施設への対応方針が打ち出された。
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