新幹線、地震の「死傷事故ゼロ」は幸運だった それでも安全対策は万全といえるのか

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中越地震を教訓に新幹線の脱線防止対策が本格的に講じられるようになった。その内容は3点に集約される。

まず、地震を早期に検知することだ。JR各社が地震計の設置を進めている。JR東日本は135カ所、JR東海は71カ所、JR西日本は73カ所、JR九州は18カ所、そしてJR北海道は17カ所に、地震計を設置している。

次に、地震を検知したら、1秒でも早く列車を止めること。各社はブレーキ性能の改善に務めている。JR東海が今年度から追加投入する「N700A」型は現行のN700Aよりもブレーキ性能を高め、「地震ブレーキの停止距離が従来のN700Aに比べて5%短縮する」(JR東海)としている。既存の車両についても同様の性能が発揮できるよう改造工事を行うという。

重要な逸脱防止の対策

第3は、地震が来る前に、停止できなかった場合の対策だ。脱線した列車がレールから大きく逸脱すると、対向車と激突するリスクがある。そのため、JR東日本とJR北海道は、すべての保有編成の台車に「逸脱防止ガイド」を設置し、脱線した場合に線路から大きく逸脱することを防ぐ仕組みを講じている。東日本大震災で脱線した列車も、事故を調査した運輸安全委員会は、「逸脱防止ガイドが脱線後にレールと接触し、車軸が右側に戻された。本事故においては逸脱防止ガイドが機能した」と説明している。

JR東海はレールの逸脱防止というよりも、脱線そのものを防ぐべく、レールの数センチメートル外側に「脱線防止ガード」を設置している。車輪が横ずれした場合、脱線防止ガードにぶつかって、車輪がレールの上に戻る仕組みだ。

上下線合わせて1036キロメートルのうち、東南海地震発生時に強い揺れが予想される三島―豊橋間をはじめ、分岐器、トンネルの手前など、全長の約6割に相当する596キロメートルに、脱線防止レールを設置する計画。現在は360キロメートルまで設置済みで、2019年度までの完了を目指す。

それでも脱線した場合に備え、JR東日本とは別タイプの逸脱防止対策も講じている。台車に取り付けた「逸脱防止ストッパ」が脱線防止ガードに引っかかることで、線路から大きく逸脱することを防ぐ。JR東海は保有する135編成すべてに逸脱防止ストッパを設置済みだ。

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