新幹線、地震の「死傷事故ゼロ」は幸運だった それでも安全対策は万全といえるのか

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熊本地震に襲われたJR九州でも、基本的にはJR東海と同様、脱線防止ガードと逸脱防止ストッパの組み合わせだ。ただ、設置が進んでいない。脱線防止ガードの設置は全体の1割弱の48キロメートルのみ。逸脱防止ストッパの設置は、JR九州が保有する20編成中、13編成にとどまる。今回脱線した場所には脱線防止ガードが設置されておらず、脱線した車両に逸脱防止ストッパは設置されていなかったという。

今回の脱線事故については、国の運輸安全委員会が調査中。中越地震で逸脱対策が講じられたように、熊本地震を契機に、さらなる対策が打ち出されるかもしれない。

地震対策は海外展開の武器になる

今回の脱線箇所は、熊本駅からそれほど離れていない。すべての列車が熊本駅に停車するため付近で高速走行はしない。つまり脱線防止ガードの優先度が高くない場所だったといえる。ただ、脱線を防ぐためには、こうした場所にも脱線防止レールの設置が必要かもしれない。むろん、コストがかかる話だが、安全性は高まる。

JR東海の脱線防止レールの設置計画は全線の6割だが、さらなる設置の可能性については、「現在の工事の進捗状況や、今回の運輸安全委員会の知見を踏まえて、決定したことがあればお知らせする」としている。

工学院大学の曽根特任教授は「新幹線対策はまだまだ万全とは言い切れないが、世界の高速鉄道で地震対策を講じているのは日本の新幹線くらい」と言う。現在進んでいる案件でも、米国サンフランシスコ-ロサンゼルス間をはじめ、地震リスクを考慮すべき路線はいくつもある。ここまで培ってきた地震対策の蓄積は、新幹線を海外に輸出する際にも、大きな武器になるに違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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