熊本地震で強力支援を展開した山のプロたち モンベルの「義援隊」が被災地支援で活躍

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「避難所の体育館に入りましたが、小さな子がいると居づらいので、外でテントならと思いました。夜は冷え込みますが何とかなり、昼間は子どもものびのびと走り回っています」と、ほっとした様子だ。

6人の子を持つ別の母親も「周りに気兼ねなく過ごせていい」。しかし「小さな子は落ち着かないので2人で1つの寝袋に入れるなどしています」と、慣れないテント暮らしに試行錯誤。夫は消防団員で救援活動に出ずっぱり、余震で家の損壊は大きくなる一方。子どもを抱えてこの先どうすればいいのかという不安は消えていないようだった。

阪神、東日本の経験は生かせるか

「熊本での活動は始まったばかり。これからライフラインは徐々に回復していくが、住民をどうサポートできるだろうか」とモンベルの三宅さんも現地で模索する。

テントには大きな利点がある

1975年にモンベルを創業した辰野勇・現会長は、1995年の阪神・淡路大震災で自社以外の企業や団体に呼び掛け、ボランティア集団として「アウトドア義援隊」を組織。アウトドアで培った経験や知識、そして機能的な道具を生かしたプロフェッショナルな支援を展開した。2011年の東日本大震災でも独自のネットワークを生かして救援物資約300トンを被災地に届けたのをはじめ、援助金で子どものキャンプ企画や自然エネルギーによる復興住宅プロジェクトまでを手掛けている。筆者も東北取材を通じて「義援隊」の活動はかなりパワフルだとの評判を聞き及んでいた。

今回の熊本支援でも、民間として現地でいち早く支援に乗り出し、全国約110の店舗での援助金や会員によるポイント寄付の受け付けも始めている。ただ、今のところ熊本での拠点は南阿蘇のみ。熊本市内や益城町など都市部の密集地でもうまく活動できるか。被災1週間が経っても被害の全貌や広がりが見通せない中で、「プロ」にとっても乗り越えなければならない山はかつてなく高いだろう。

(文中写真:筆者撮影)

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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