高島屋がニトリをテナントに取り込んだ理由 木本茂社長に百貨店事業の巻き返し策を聞く

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――新宿店は、高い賃料が収益を圧迫して、2013年2月期までは赤字だったが、不動産を購入することで黒字化した。人の流れの変化で今後はさらに飛躍する可能性が出てきた。

黒字化というと、小さな数字のように聞こえるが、今は大きな黒字になっている。もともと、土地・建物は4割だけが持分で、残りの6割には高額な家賃を払っていたため、開店以来黒字にならなかった。

採算改善に向け、私が新宿店の副店長を務めていた2007年からは構造改革を断行した。新宿店の社員約250名を他店に異動させ、人件費を削減した。同時に、全店から優秀な人材を集めて営業力が低下しない体制を構築した。また、2013年には1000億円を投じて建物と土地の一部を購入。利益で言うと、数十億円のレベルで改善している。

現在、収益性で言えば新宿店は5番手だが、今期の計画では3番目の高収益店舗となる見込みだ。そして、将来的には、採算首位の横浜店に次ぐ高収益店舗にしていきたい。

新宿は改装効果で客数が2ケタの伸びに

――4月からの環境変化を見越して、レストランやデパ地下など、フロアの改装もしてきた。成果のほどは?

この春にリニューアルされた高島屋のデパ地下。総菜が小パックで選べる「タイムズデリ」が働く女性に人気だ

4月4日から1週間で、前年同期と比べて入店客数が11%伸びている。去年の入店客数は、全店で前年比2%増だった。2ケタ伸びるというのはよほどのことだ。

昨年秋に改装したレストランは20%増。今春に改装が終わったデパ地下も15%伸びている。デパ地下には、出汁・調味料を展開する「茅乃舎」や手作りパン・菓子の材料を展開する「富澤商店」など、今勢いのある店を入れた。惣菜のセレクトショップが働く女性からの支持をいただいている。

――百貨店事業は前期の10%減益から今期は9%の増益に挑む。何が牽引するのか。

今期は、インバウンドと富裕層に頼らざるを得ない。

最も牽引するのは、新宿店をはじめとする増収効果で、その半分の350億円分がインバウンド需要となる見込みだ。さらに、18万口座で1500億円の売り上げがある富裕層の外商客も深耕していく。

ここ10年間、外商向けの営業員の数を減らしてきており、現在は550人で18万口座を担当している。マンパワーを補うため、去年11月には外商の客専用のオンラインサイトを開設した。8月には客自身が決済できるようになる予定で利便性はさらに高まる。早期に20万口座まで増やしていきたい。
 

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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