ライオンが中国の高級ブランドになった理由 指名買いされる人気の秘密を濱社長が語った
――米企業が根を下ろす中国の歯ブラシ市場で、シェアを伸ばしている。
競合他社に先駆けてECに力を入れてきたことが大きい。ライオンの中国ビジネスは、1988年に現地企業と合弁を設立して始まった。2011年に現地法人を完全子会社化したころから集中的にマーケティング費用を投下できるようになり、ECを始めることができた。
当時は中国のECがこれから盛り上がる、という時期だった。ライオンは日本では誰もが知っているが、海外ではそうはいかない。消費者に対してダイレクトに商品を紹介できるECはとても有効だった。
歯ブラシや歯磨きは、口に入れた瞬間にいいものかどうかがわかる。品質の高さを中国の消費者にも実感していただき、一気に新規客が増えた。特に歯周病予防の歯ブラシ「システマ」が評価され、そこから中国ビジネス自体が好転してきた。
現在の中国では日本の製品への信頼感が高まっている。私自身、2015年末に中国に行き、それを肌で感じてきたところだ。
ライオン製品は、なぜ人気なのか?
――ECの実績はどの程度か?
中国におけるECの売り上げはここ数年で毎年倍増し、全体に占める比率は35%まで高まった。2014年には、現地にオーラルケア製品の工場を新設し、生産能力を4倍に引き上げたものの、それでもフル生産状態だった。
品薄状態を補うために、現地法人がEC限定で日本の製品を販売すると、それも絶好調。中国の好調を受けて、2015年から今年にかけて、歯ブラシを生産する日本の明石工場を10年ぶりに増強している。
――他社の製品とどこが違うのか、売れている理由は?
歯ブラシは、高機能品になるほど毛の植え方が複雑になっていく。当社の製品は、細かく磨けるようにヘッドを小さくしつつ、口の中で折れにくいようにしている。
こうした高い品質を実現するためには、非常に多数の工程を経る必要がある。繊細な製品をいかに大量生産するか。そこに技術の粋が詰め込まれているわけだ。この技術は、中国の工場でそのまま横展開されている。中国でも、メイド・バイ・ジャパンの強みは十分に発揮されている。
面白いのは、単に歯ブラシが売れるというだけではなく、ライオンの中国名である「獅王」(スーオン)という言葉自体がブランドになっているということだ。2015年は、訪日観光客向けに、足裏冷却シートやニキビ治療薬がよく売れたが、彼らは(商品名ではなく)「獅王」が欲しい、と指名買いしてくる。コーポレートブランドが信頼の印になっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら