浦和高校に「分断社会」解消の答えがあった!

誰もが受益者になれる制度設計が必要だ

井手:いま佐藤さんが言われた「社会の統合」(social integration)は、社会科学の世界では、極めて一般的な概念です。ところが、政治家が「社会統合」、つまり、価値観の違う人間をたばねて、どんな社会を目指すのか、きちんと語る姿を見たことがありません。

佐藤:とくに日本の政治家の場合、社会のことはほとんど何も言わない。国家を強化すれば、おのずと社会も強化されると思い込んでいます。

「獣の世」としての日本社会

井手英策(いで えいさく)/1972年福岡県久留米市生まれ。1995年東京大学経済学部卒業。2000年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。東北学院大学、横浜国立大学などを経て、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は財政社会学

井手:そうした中で、「こんなに頑張ったのに、どうして経済的にうまくいかず、社会的に認められないのか」という怨嗟の声が広がっています。最近、松澤裕作さんと論文を書いたのですが、大本教の開祖、出口なおが明治時代に目の当たりにしたのは、まさにそういう「経済的敗北者」を「道徳的失敗者」とみなす「獣(けもの)の世」でした。現代の、新自由主義的な競争社会も、「獣の世」とうり二つです。

新自由主義というのは、本当に危険だと思います。左派が新自由主義の批判をしますが、現実はそれ以上に深刻です。リーマン危機で弱まるかに見えましたが、いまだにしぶとく生き残っている。

結局、日本の政治も財政も、個別利害のかたまりでしかありません。社会全体の利益を実現しているのは、義務教育と自衛隊ぐらいです。それでも経済が成長していれば、自分もバラマキの恩恵にあずかることができました。でも、現在のように右肩下がりが続く中では、それも叶いません。どこかから、引きはがさなくてはならなくなる。「経済効率性」の名の下に「ムダ」のレッテルを貼って、それに削減の根拠を与え、人間を奪い合いに導いたのが、新自由主義です。

佐藤:そう。しかも、国債を発行して財源を賄うといっても限度がありますから、結局、こちらから引きはがしてはあちらに付け、あちらから引きはがしてはこちらに付けるということの繰り返しになってしまう。

井手:そして、引きはがすときには、対象となった人たちをバッシングすることになりますから、袋だたきの政治が始まるわけです。公務員たたきや生活保護受給者バッシングはその典型です。ある時期以降、日本の政治はそういうことを繰り返し、分断を煽ってきました。

その延長線上で気になるのは、外国人労働者の問題です。安倍政権になってから、外国人労働者は3割ほど増えています。

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