浦和高校に「分断社会」解消の答えがあった!

誰もが受益者になれる制度設計が必要だ

井手:僕も財政再建は重要だと思っています。そこは財務省と変わらない。ただ、歳出削減と行政効率化だけでは、財政再建は実現できません。それはこの20年の歴史が証明しています。むしろ逆効果。だからこそ、「誰もが受益者」という財政戦略が重要なんです。受益者を増やして、国家の租税調達力(extractive capacity)を高める戦略です。政府がこういう戦略を取れるかですが、なかなか勇気をもてずにいます。かといって、財政再建を優先させて、増税だけやれば、それは誰もが強烈に反対する。だから、なんとなく増税をせずに、歳出を減らすという「小さな政府」路線に落ち着いてしまうんです。

こんなに危険な「小さな政府」

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佐藤:そう。しかも、小さな政府が、最初に何を削ぎ落すかというと、福祉・教育・文化の領域です。つまり、政府の機能が警察と外交、軍事に特化していく。夜警国家ですね。そうなると、暴力装置としての国家がむき出しになって、官僚の体質も暴力的になっていく。

井手:暴力と自由の問題ですね。ずっと僕は「小さな政府」の問題を考えてきました。おっしゃるように、政府を小さくするには、福祉や教育といった領域を切り落としていくしかない。そうなると、人間の自由が損なわれていく。

新自由主義者は、小さな政府こそ、自由を尊重していると言うわけですが、実はまったく逆です。財政的に言うと、小さな政府になればなるほど、公的サービスを受ける人の所得制限が厳しくなっていく。いくら必要でも、生活保護がもらえなくなり、大学進学や病院に行くこと、ときには子どもを産むことさえあきらめなくてはならなくなる。小さな政府は、明らかに人間の「生」に対して介入しているんです。より残酷な形で。

佐藤:状況はかなり絶望的です。

民主党政権が誕生したとき、多くの人は期待感をもって、この政権を見ていました。ところがその期待は裏切られてしまった。そのうえ、安倍政権にも裏切られてしまったら、もう後はない、と多くの人が感じているはずです。そういう自分を直視したくないから、安倍政権を信じ続ける。自分のみじめな姿を見たくないわけですね。

これはDV関係にあるカップルと同じ構図です。それだけ絶望的な状況にあっても、多くの人がそのことに気づいていない。いや、気づこうとしていない。しかし、だからこそ、この現実をしっかり認識しなければなりません。その意味でも、今回の井手さんたちの『分断社会を終わらせる』は貴重な1冊です。

井手:本当の自由とは何でしょう。少なくとも、自分の生き方を自分で決められない社会は、自由な社会とは言えないですよね。新自由主義による小さな政府では、人間は自由に生きられない。人間の生活の基礎的ニーズをちゃんと保障し、誰もが自分の生き方を決められる社会は実現できるのか。徹底的に考えたいと思っています。
 

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