浦和高校に「分断社会」解消の答えがあった!

誰もが受益者になれる制度設計が必要だ

井手:興味深い話ですね。それにしても、浦和高校と灘高の違いは、どこから来るのでしょうか。

佐藤:ひと言でいえば、親の情報格差ですね。灘高の場合、すでに親たちのほうで、「自分たちが考えているようなエリートは、もはやエリートではない」ことがわかっている。ですから、「東京に行って、第一線はどうなっているのか、先輩たちに話を聞いてこい。その上で進路を決めろ」と、子どもたちに指導しているわけです。

井手:なるほど。所得間格差が開くことで、貧困層の子どもの学力低下が生じてしまうという問題があるわけですが、富裕層の間でも、情報格差によって分断線が生み出されているわけですね。

受益者を「一律」とする浦和高校の知恵

佐藤:実は浦和高校は、イギリスのホイットギフト校と姉妹校締結を結んでいて、交換留学制度が用意されています。滞在期間が3カ月程度の場合、個人負担分は約37万円になりますが、その費用をボンと出すことができる親もいるが、そうでない人もいる。ですから、本人負担は一律7万円とし、残りの30万円は、卒業生からの寄付によって作られた基金で賄っているんです。このあたり、浦高はとてもバランスのとれた対応をしていると思います。

井手:貧困層だけでなく、富裕層の子弟でも、自己負担分は一律7万円。いいですね、それは! 僕の思想にぴったりだ(笑)! 貧しいから助けてもらったというレッテルを貼られることは一番怖いことです。

佐藤:そのとおりです。 

「誰もが受益者」になれるような制度設計が必要だ

井手:僕らが『分断社会を終わらせる』を書いたときの基本コンセプトが、まさにそれでした。

貧困層といった、ある特定の人たちを受益者とすることは、よいことのように見えて、往々にして人を傷つけてしまう。浦和高校の例だって、貧しい人をタダにしたら、貧困が丸見えになり、クラスで排除が起きるかもしれない。「誰もが受益者」になれるような制度設計は絶対に必要なんです。

佐藤:低所得者層に対する制度的な救済措置を講じたいのなら、金持ちを敵に回すような政策ではいけません。ヨーロッパには長年の蓄積があるので、そのことがよくわかっている。

井手:そのとおりです。日本社会の大半は中間層です。この人たちが、貧困層の救済措置に同意するかどうかが重要です。現状では、いくら左派のエリートが頑張って、「富を再分配することで、困っている人たちを助けましょう」と言っても、多数派たる中間層はそっぽを向く。

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