貨物共用の新幹線やリニアは特例法の対象? 「鉄道の発展」過程で変遷してきた法律体系

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もう一つ頭の体操である。

新幹線特例法第4条「新幹線鉄道の走行中の列車に向かって物件を投げ、又は発射した者は、5万円以下の罰金に処する」にいう「走行中の列車」には貨物列車が含まれるのであろうか。前述したように、少なくとも現行の貨物列車は最高時速200㎞以上で走行することは性能的に無理である。

しかし、新幹線特例法は高速走行可能な新幹線の軌道の安全、制御システムの安全、列車の円滑かつ安全な運行を確保することを目的としている。時速200㎞未満で走行する貨物列車であっても新幹線の線路上を走行しているものについては、新幹線特例法4条で保護の対象となるというべきであろう。

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リニア中央新幹線が開業したら「新幹線特例法」はどうなるのか?(写真:ABC / PIXTA)

ところで、将来開業するリニア中央新幹線も政令により新幹線特例法の対象とされることになろう。しかし、中央新幹線は従来の鉄道とは全く異なる超電導磁気浮上式鉄道を採用し、運転士の乗務すら前提としていない。最高時速は異次元の505㎞に達する。新幹線特例法が適用されるとしても、現状の新幹線特例法のままでよいか検討されるべきであろう。

鉄道の発展過程で法律も変わる

その昔、蒸気機関車が走り始めたころの大正時代、中央本線日野春駅付近にあった有名な松が煤煙で枯れたとして裁判が起こされた(信玄公旗掛松事件)。昭和初期、鉄道車両の一種であるガソリンカーが事故を起こしたとき、過失往来危険罪にいう「汽車」の概念に「ガソリンカー」が含まれるかどうかということが争われた(ガソリンカー事件・同罪は「汽車、電車…」とあってガソリンカーは形式的には含まれていない)。かつて大きな問題となった東海道新幹線の騒音被害も開業してからのことである。

法律が現実を後追いするというのはよくある話である。鉄道業界でも例外ではなく、現実に合わせるために既存の法律に対する様々な解釈や立法が試みられることがある。

鉄道営業法の特例で東海道新幹線特例法が誕生し、さらに新幹線特例法と発展したように、超電導磁気浮上式鉄道をはじめとする今後の鉄道の発展に伴って、どのような法律が制定され、あるいは改正され、あるいは事例が集積されるのか。興味が尽きないところである。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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