新幹線特例法の前身は、1964(昭和39)年10月の東海道新幹線開業に先立って成立した「東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」(以下「東海道新幹線特例法」)である。
この東海道新幹線特例法は、第1条において、「東海道新幹線鉄道(東京都と大阪府とを連絡する日本国有鉄道の幹線鉄道であって、その軌間が1.435メートルであるものをいう。以下同じ)の列車がその主たる区間を200キロメートル毎時以上の高速度で走行できることにかんがみ、その列車の運行の安全を妨げる行為の処罰に関し、鉄道営業法(明治33年法律第65号)の特例等を定めるものとする」と定めていた。
新幹線開業前の東海道本線では「こだま」などの特急が運転されていたが、その最高時速は120㎞にとどまっていた。その時代に、最高時速200㎞、全線連続立体交差、長い制動距離などに対応した新幹線用ATC(自動列車制御装置)の採用という、それまでの国鉄在来線の概念を覆す東海道新幹線が開業することになったのである。
特例法ができたワケ
東海道新幹線特例法案についての参議院運輸委員会(昭和39年6月9日)の議事録を見ると、同法案の必要性について、政府委員(運輸省鉄道監督局長)から、「鉄道営業法は主として鉄道利用に関する秩序を維持するという観点から規定されているために罰則が軽いこと」「鉄道営業法は古い法律であるために非常に高度な技術を採用した新幹線を予定していないこと」という説明がされている。
刑法の往来危険罪、器物損壊罪、鉄道営業法だけでは「夢の超特急」運行の安全確保は不十分と認識されていたのである。
東海道新幹線の成功を受けて、1970(昭和45)年、新幹線を全国展開することを目的に全幹法が制定されることとなった。そしてこのときの全幹法の附則8項により、東海道新幹線特例法は新幹線特例法と改称されることとなり、対象となる新幹線は「全国新幹線鉄道整備法による新幹線鉄道」と定められた(軌間1.435mという文言も削除されている)。東海道新幹線限定が解除されたのである。
さらに全幹法附則第1項により、新幹線特例法を適用する区間は政令で定めることとされた。これが今の新幹線特例法に引き継がれている。
2016(平成28)年3月26日に開業した北海道新幹線も、これに則って政令により新幹線特例法の適用区間に加えるものとされたのである。
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