日本全国の鉄道利用者は1か月で延べ18億人に達する(国交省・鉄道輸送統計月報2016(平成28)年2月分)。1日に換算すると、実に6000万人以上である。JR東日本のホームページによれば、新宿駅へはJRだけでも1日74万人もの乗車客が押し寄せる。
多くの人が集中すると、不可避的にトラブルが発生する。たいていのトラブルは現場限りで終わり、大きな騒動に発展するのはほんのひと握りであろう。しかし、利用者同士のトラブル、あるいは鉄道会社とその利用者との間のトラブルが、些細なことから大きな問題に発展することもある。鉄道はそれこそ法的紛争、法的問題の坩堝(るつぼ)といってもいいかもしれない。
今回一回のみでは収まりきらないが、鉄道を取り巻くトラブルや紛争などの法的問題について述べてみたい。
鉄道職員への暴力は年間887件も
国交省鉄道局鉄道サービス政策室の発表によれば、2014(平成26)年には、鉄道職員に対する暴力に限っても887件のトラブルが発生しているという(前年は852件、前々年は932件)。残念なことに、もはやありふれた風景になりかけている鉄道職員に対する暴力行為について、法律上はどのように処罰されるだろうか。
もっとも典型的なものは暴行罪である(刑法第208条)。人に暴行した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金または拘留で処罰されることになる。
この「暴行」の定義は我々法律家の間では「人に対する不法な有形力の行使」と定義づけられている。単に叩く行為だけでなく、たとえば、「狭い室内で人を脅かすために日本刀の抜き身を振り回す行為」も暴行とされている。列車という狭い空間で職員や乗客に対して凶器を振り回すなどすれば暴行となり得る。
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