ところで、写真による肖像権侵害を含め、民事上損害賠償請求が認められる場合には、少なくとも以下の2点を満たす必要がある。
2:行為者に故意または過失があること
の2点である。
まず、賠償の対象となる損害は、原則として一般的に見て行為と相当な因果関係にある損害に限定される(1)。「風が吹けば桶屋が儲かる」的な薄い関係では足らない。何気なく撮った写真で人の不倫がばれた程度では不十分である。
また、他人へ損害を与えることの故意・過失が「加害者」にあることが必要である(2)。注意をすれば損害発生の可能性を知ることができ、損害発生を回避できたのに、それを怠ったといえることが必要である。
写真の拡散によって被写体の人に何らかの損害が発生したとしても、どのような基準で撮影者に過失が認められるかは必ずしも未だ確立していないように思われる。しかし、最近では、SNSなどへ写真をアップする場合の注意が広く知られるようになってきた。たとえば、「人の子どもの写真をむやみに載せるな」とか「タグ付けする際には対象者の同意を得よ」などである。その注意も利用者の常識になりつつある。
将来的にSNSへの不用意な写真アップにより写りこんだ人が損害を受けることが多発し、いままで以上に写真アップに対する目が厳しくなれば、そのような注意を怠った場合に過失ありと判断される可能性が出てくることになろう。
3月廃止のあの駅での撮影も・・・
なお、不特定多数の人が撮影されるのでなく、特定少数の人が撮影される場合には、より一層対象者の肖像権が問題になる場合があろう。
たとえば、2016(平成28)年3月に廃止された石北本線・旧白滝駅(北海道)では、同駅における唯一かつ最後の乗降客となっていた地元の高校生の姿を鉄道風景の写真として撮影しようと訪問する人が増え、その高校生に対して立ち位置などを指示する者もいたと聞く。
事実であるなら法律以前の問題と思わざるを得ないが、その撮影方法や高校生の受け止め方次第では、この高校生に対する不法行為につながりかねなかったといえるだろう。
鉄道写真に限らないこととはいえ、鉄道写真は性質上、特に不特定多数あるいは特定少数の利用者が写りこむ可能性は高い。むしろ、人が写ってこその鉄道写真というものもある。人が写っている鉄道写真を否定するつもりはない。しかし、少なくとも撮影マナーやネットマナーの一環として、他人の肖像権に対する十分な注意がこれまで以上に必要になって来ているといえるだろう。
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