古代ローマの痛風治療には、シビレエイを用いていたことの記録もある。痛風による痛みが始まったら、海岸に置いたシビレエイの上に自分の足を乗せて立ち、脚全体が痺れ、感覚が失われるのを待ったという。
鎮痛薬は進歩を続けたが、痛みを取るだけでなく、原因に働きかける治療は、痛風と尿酸の関係が明らかになるまで、待たなくてはならなかった。そして、20世紀になると、「病気の王様」はノーベル賞も呼び込むことになる。
尿酸値を下げる薬として、尿酸排泄を促す薬、そして尿酸生成を抑える薬の創製が試みられた。まず脚光を浴びたのが、最初の尿酸排泄促進薬であるプロベネシド(ベネシッド®)である。第二次世界大戦中、貴重だったペニシリンの血中濃度を上げる作用を持つ薬として使われていたが、偶然、尿酸を低下させられると分かったことで、1951年から痛風予防に使われている。
抗がん剤開発の過程で見つかった特効薬
もう1つの尿酸生成抑制薬は、英国バローズ・ウェルカム社(現・グラクソ・スミスクライン社)のエリオンとヒッチングスが発見した特効薬、アロプリノール(ザイロリック®)だ。
当初抗がん剤を目指して開発が進められ、その効果はあまり見られなかった一方で、尿酸値を低下させる作用が見つかったことで、痛風治療に用いられるようになった。後に、尿酸生成を触媒する酵素(XOR)の働きを抑えていることが分かった。
エリオンとヒッチングスは、このアロプリノールに加え、メルカプトプリン、アザチオプリン、アシクロビルなど、5種類の薬を創製し、1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。1960年代後半に登場したアロプリノールは、完全無欠とは言えなかったものの、その効き目の高さから、長らく痛風治療の中央に君臨し続けた。
このノーベル賞級の薬をしのぐ薬を発見したのは、日本である。
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