「パナマ文書」の衝撃波は、日本にも到達する メガトン級リークの影響は甚大だ

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この理由として、米国は、「世界で最も過酷な徴税機関」の異名をとるIRS(内国歳入庁)の監視と罰則が非常に厳しいことが挙げられる。米国人は海外に持っている銀行口座をすべてIRSに申告しなくてはならず、隠ぺいが発覚した場合は、預金残高の50%以上のペナルティが科される。

また2010年にForeign Account Tax Compliance Act (FATCA)という法律ができ、世界のすべての金融機関は米国人の口座情報をすべて提出するよう義務付けられた。違反すれば米国内での営業停止や莫大な罰金が科される。この法律によって鉄壁と言われたスイスの金融機関の守秘義務は打ち破られ、今ではスイスの金融機関の多くが米国人との取引を拒否している。

当然脱税に対する罰金や罰則は厳しく、たとえば海外の銀行口座の申告漏れは1件につき1万ドルの罰金、意図的な隠ぺいの場合は数十万ドルの罰金を科され、一般市民が脱税で投獄されるケースも珍しくない。こんな国では恐ろしくて、わざわざ海外のタックスヘイブンに行って脱税しようという気にはならないだろう。

世界の資金が円に向かう?

一方、日本に関しては、セコム創業者の飯田亮氏をはじめとして、日本国内を住所とする約400の個人や企業の情報がパナマ文書に含まれていると報じられているが、あまり注目度は高くない。

その理由はだいたい以下の4つである。

パナマには元々日本の船会社、商社、金融機関が数多く進出しており、同国や周辺のタックスヘイブンに合法的な目的で会社を持っていても不思議はない。
日本は他国に比べて富の偏在が少なく、タックスヘイブンを使ってまで節税や脱税をしようという富豪の数が少ない。
タックスヘイブンの利用を勧めるようなプライベートバンキングが発達しておらず、国民の金融に対する知識も欧米ほど洗練されていない。
平成25年度から海外に5000万円以上の資産を有している場合、税務署に申告しなくてはならなくなった。

 

何人かは脱税で摘発されるケースが出てくるかもしれないが、今のところ日本にそれほど大きな影響があるとは思えない。欧米金融機関の信用力が低下して、世界の資金が円に向かうというような可能性があるかもしれない。

ただしパナマ文書はウィキリークス以上のメガトン級のリークだ。今後、これによって日本を取り巻く政治や市場の環境は大きく変動する可能性がある。決して無関係ではないし、他人事ではすまされない事件である。

黒木 亮 作家

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くろき りょう / Ryo Kuroki

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。大学時代は箱根駅伝に2度出場し、20キロメートルで道路北海道記録を塗り替えた。ランナーとしての半生は自伝的長編『冬の喝采』に、ほぼノンフィクション の形で綴られている。英国在住。

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