「パナマ文書」の衝撃波は、日本にも到達する メガトン級リークの影響は甚大だ
一部は合法的なものもあるだろうが、これらの大半は不正な取引だろう。先に述べたコンゴ共和国やロシアも含め、独裁(ないしは準独裁)国家では三権が分立していない。いわば泥棒と警官が同一人物のような状態なので、不正や疑惑が野放しにされ、今回の暴露でもどの程度の捜査が行われるかは疑問である。ただし、中国やロシアでは、政争の具くらいにはなるだろうし、大規模なデモなどに結び付けば、政権が揺らぐ。
一方、三権が分立し、メディアの監視も機能しているアイスランドや英国では首相が辞任したり、厳しい批判にさらされたりしている。オランダのABNアムロ銀行の監査役会メンバーは辞任し、オーストリアのヒポ・ランデスバンク・フォラールベルクの頭取も辞任した。
影響が出るのは、まず先進国
今回明らかにされた不透明な取引はロシアや中国などのほうが圧倒的に多いが、影響が出るのは先進国のほうだ。すでに欧米各国の税務当局や金融監督当局が調査に乗り出している。各国ともリーマンショック以降の財政赤字をカバーするために徴税に血眼で、私が住む英国でも海外資産に関する監視がここ数年で非常に強まったと肌で感じている。パナマ文書に関しては相当厳しい調査が行われるはずである。すでにパナマ文書によって、第二次大戦中にナチスが略奪したモディリニアーニの絵画(時価27億円程度)の所在が特定され、ジュネーブで当局に押収された。
また欧米の金融機関への悪影響も予想される。ペーパーカンパニーの設立は金融機関によって持ち込まれることが多く、パナマ文書に関しては、HSBC、クレディ・スイス、クーツ(英国王室御用達のマーチャントバンク)、ソシエテ・ジェネラル、ロスチャイルドなどが、各行数百から1500以上の案件に関わっていたと報じられている。
UBSは2009年に、クレディ・スイスは2014年に、米市民の資産隠しに加担したとして、それぞれ7億8000万ドルと28億1500万ドルという巨額の罰金を米国で科された。HSBCは2012年にマネーロンダリング対策の不備で約19億ドル(当時の為替レートで約1600億円)の罰金を、2015年にはドイツのコメルツ銀行が、マネーロンダリング対策の不備、イランへの送金その他の法令違反で14億5000万ドルの罰金をやはり米国で科された。
パナマ文書で名前が出ている金融機関は、欧米の捜査の結果、再び莫大な罰金を科される可能性があり、これら金融機関の株価は下落している。
今回のパナマ文書では、米国や日本の話はあまり出ていない。それは、なぜだろうか。
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