大塚家具、娘に勝訴した父は何を得たか 「主文、久美子氏は勝久氏に15億円を支払え」

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原告の大塚勝久氏が裁判で勝訴。被告の久美子氏は15億円を支払うよう言い渡された(写真は15年2月の記者会見。撮影:尾形文繁)

「主文、被告は原告に対して15億円および、これに対する平成25年4月4日から支払い日まで年6分の割合による金利を支払え。訴訟負担は被告の負担とする」。4月11日午前10時30分過ぎ、東京地方裁判所5階の526号法廷に裁判長の声が響いた。

大塚家具創業者の大塚勝久前会長が、長女である大塚久美子社長が管理する一族の資産管理会社「ききょう企画」に対し、15億円分の社債償還を求めた訴訟判決。勝久氏側に軍配が上がった瞬間だ。

久美子氏側は遅延金を含め、約17億円を勝久氏に支払わなければならず、控訴するのは必至とみられる。株主総会で経営権を争い、久美子氏が勝利してから約1年。法廷を舞台にした“第2ラウンド”で、勝久氏が一矢報いた形となった。

「株は相続対策でもらった」と久美子氏は主張

久美子氏は「譲渡された大塚家具株は事業承継と相続対策が目的」と裁判で主張した(写真は今年2月の新宿ショールームのリニューアルにて)

今回の争いは、2008年に勝久氏が、久美子氏が役員を務める「ききょう企画」に対し、社債15億円(5年期限、年利1.5%)と引き換える形で、大塚家具の株式130万株を譲渡したことから始まった。が、償還期限の2013年4月になっても、ききょう企画が社債の償還に応じなかったため、勝久氏が同年10月に提訴したものだ。被告のききょう企画(久美子氏側)は、「大塚家具の事業承継と相続対策が目的であり、社債償還の延期は合意されていた」と主張していたが、判決では、延期について正式な合意はなかったと判断された。

久美子氏側の代理人弁護士は、「当方の主張が認められなかったことは誠に遺憾である。今後の対応は判決文を精査のうえ検討する」としたうえで、「本訴は社債償還請求に関するものであり、大塚家具の株式譲渡の有効性については何ら争いになってない。したがって、ききょう企画が保有する大塚家具の株式130万株の帰趨に影響を与えるものではない」という、異例のコメントも追加した。

その背景にあるのは、裁判の舞台となっているききょう企画が、大塚家具の株式約10%を保有する筆頭株主だからだ。現在は久美子氏がききょう企画を実質支配しており、2015年3月の大塚家具の株主総会で勝久氏と争った際は、久美子氏を支持する“大票田”となった。株主総会における久美子氏勝利も後押しした。

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