大塚家具、娘に勝訴した父は何を得たか 「主文、久美子氏は勝久氏に15億円を支払え」

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しかし、今回敗訴したことで、その状況が変わる可能性がある。ききょう企画は資産がほとんどないため、15億円分をキャッシュで返済できなければ、それを捻出するため、勝久氏から譲渡を受けた大塚家具の株式を「代物弁済」するという選択肢が浮上するからだ。

もっとも、久美子氏が社長就任以降に打ち出した配当倍増政策で大塚家具の株価は急騰しており、ききょう企画の保有する大塚家具株の企業価値は、従来に比べて高まっている。株式の代物弁済でも当時の130万株全株を返す必要はなくなっているが、それでも久美子氏にとって、大塚家具の“安定株主”を失うことにつながりかねない。

勝久氏側はさらに手段を打っている。別の訴訟を2015年、東京地裁に提訴。久美子氏が今回の社債償還訴訟直前に設定したもので、久美子氏自身への大塚家具株の譲渡担保契約が「無効」であるとして、現在も争っている。

株売却で資金得た勝久氏は新天地へ

大塚勝久氏が新会社「匠大塚」を設立する中、本家の大塚家具はどう出る(写真は新宿ショールーム)

これについて、勝久氏側の代理人弁護士は同年の記者会見で、「(社債償還の裁判で負けた場合に)資産差し押さえを免れることを目的とした、虚偽の名義移転であり、財産隠匿を行ったものだ」と痛烈に批判。株式での弁済となった場合、株式を確実に取り戻すため、2本立ての裁判に打って出ているわけだ。これに対して久美子氏側は、「事実認識に誤りがある」としている。

その一方で、久美子氏は4月2日に突如、株式譲渡担保を解除。三井住友銀行との借り入れ交渉も進めており、状況は混沌としている。

ただ、勝久氏がどこまで株式取得にこだわっているかは、不透明だ。株主総会前に18%あった大塚家具の保有株式を市場で段階的に売っており、現在は8%台にまで低下し、筆頭株主を外れている。株式売却では20億円以上を手に入れたとみられ、それを軍資金に家具販売の新会社「匠大塚」を設立。4月22日に東京・日本橋に店舗をオープンする予定だ。

大塚家具のお家騒動から、まだ目が離せない。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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