一方で、12月期決算企業で、新日本監査法人の継続を決めた企業には、キヤノンやライオン、ヤマハ発動機、日本マクドナルドHDなどが含まれる。株主総会で、理由を問われたマクドナルドは「監査の水準や品質は定期的に報告を受けている。今回の事件で、より慎重に精度をもってやっているので、その辺りを勘案した」(石井隆朗・常勤監査役)と説明している。
新日本監査法人も、品質管理について、本部に集中していたチェック体制を、各事業本部や地区に拡大。今後は「現場に近いところで品質管理をする」(辻理事長)ことで向上を図る。組織の要であるパートナー社員の意識改革のため、人事評価も品質管理にひも付けさせた。一連の改革について、あるパートナー社員は「以前よりも業務の改善案など意見が言いやすくなった」と評価する。
新日本と東芝の間に何があったのか
ただ、金融庁は新日本監査法人による東芝の監査について、審査、検証の不十分さを指摘するのみだ。それが何に起因していたのか、新日本監査法人と東芝との間に何があったのかまでは具体的には明らかにしていない。
コンプライアンス問題に詳しく、IHIの社外監査役を務める郷原信郎弁護士も「東芝の第三者委員会をやりなおして、新日本監査法人は何にだまされたのか明らかにすべき」と指摘する。
この先には3月期決算企業に加え、公官庁や地方自治体、大学も決算時期を迎える。かつて、カネボウの粉飾決算に会計士が関与した旧中央青山監査法人は、再発防止を誓ったあと、旧日興コーディアル証券や三洋電機の決算問題に揺れて、解体に追い込まれた経緯がある。新日本監査法人の信頼回復の道は決して平坦ではない。
(「週刊東洋経済」2016年4月16日号<11日発売>「核心リポート03」を転載)
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